感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
28
76年(昭和51年)320円の白背初版。カバーは金森氏。早川白背の特徴は口絵と挿絵だが、登場人物一覧も含まれるのかも。本書は前提として平行宇宙へ往来できる富豪集団の寡占テクがあり、数十万もの惑星資源を有する理屈となる。このバブリイな設定をスぺオペにせずに社会群像劇に持って行く処がいかにもブラナーだ。冒頭部分の喰い付きが良いとは言えないが一旦咀嚼すれば俄然面白くなる。寝たきり異能者(?)もいてディックっぽいぞ。異世界から得られるのは利益だけとは限らない。悪疫には懲りたが…侵略者の奸計に注意せよ!★★★★☆☆2024/03/01
白義
9
数十万の平行世界が存在する次元、それらの諸世界の交点としてそびえ立つ、一千階の巨塔──〈市場〉。この鮮烈なイメージが何よりも印象的な多元宇宙テーマの良作。魅力的な舞台で繰り広げられるのは善人など一人もいない登場人物たちの強欲と悪意渦巻く謀略、むせ返るような熱気を孕んだどす黒いアクション。明確な主人公がいない、状況のスリルだけで繋いでいったようなストーリーなのに実に読みやすく、先へ先へと引き込ませるのは著者の筆力というものだろう、世界観自体のインパクトを上回るものはないが、練達の職人作家のストーリーテリング2017/12/16