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内容説明
「ジュリアン・ウェルズという真摯な作家がいた。あの日、彼は自殺した―彼はかけがえのない友だった」犯罪・虐殺を取材し、その本質を抉る作品を発表したジュリアンは、死の直前もロシアの殺人犯に関する資料調査に没頭していたという。執筆意欲のあった彼がなぜ死を選んだのか?親友の文芸評論家フィリップは、やがて友の周囲でかつて一人の女性が行方不明になっていたことを知る。フィリップはジュリアンの妹とともに手掛かりを追うが…。友情という名のかたちのないものをめぐる、巨匠の異色ミステリ。
著者等紹介
クック,トマス・H.[クック,トマスH.] [Cook,Thomas H.]
1947年にアラバマ州に生まれる『緋色の記憶』でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞。マルティン・ベック賞受賞作『緋色の迷宮』など、数々の名作を著している世界的作家である
駒月雅子[コマツキマサコ]
1962年生、慶應義塾大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
ジュリアン・ウェルズという犯罪・虐殺を取材してその本質を抉る作品を次々と発表している作家が自殺した。ジュリアンは行方不明になったアルゼンチンでガイドをしてくれた女性の消息を必死で探していたという。親友のフィリップは、その女性の失踪がジュリアンの心に暗い陰を落としていると考え、ジュリアンの足跡を辿り始める。アルゼンチンのガイドの女性は、何者だったのか。彼女への疑惑が深まる中、衝撃のラストに胸がつまされる。苦しみぬいたジュリアンに対してもう一人があまりにも平然としていることにも衝撃を受ける。2022/04/25
星落秋風五丈原
39
素晴らしきジュリアンはなぜ死んだのか?ヒントが数えきれないほど出てくる。フィリップは手掛かりにと取材のために自殺する前ジュリアンが立ち寄った先を訪れるが他の人の印象ががらりと変わっても、やはり彼のジュリアン像は揺るがない。砕くのは一体何(誰)か?答えは”幸せの青い鳥”と同じだった。次々と事件が起こるスピーディーなミステリではなく、ロードムービーのようにゆっくりと時間が流れていく文学作品のような雰囲気を持つ作品だった。もしフィリップの性別が女性で異性愛者だったなら、一種のラブストーリーになったのではないか。2019/05/23
りつこ
14
才能と正義感に溢れていた親友の自殺。その理由が知りたくて彼の足跡をたどり始める主人公。父に勧められて二人で旅したアルゼンチン。そこでガイドをしてくれた女性の失踪。彼が書き進めていた陰惨な事件の記録。ミステリとしての意外性やどんでんがえしはないけれど、じっくり読む楽しさに満ちている。最近のクック作品は暗さの中に少しだけ優しさがあってそこが救い。2014/05/12
sine_wave
12
作家ジュリアンの友人で文芸評論家のフィリップが、ジュリアンの自死の理由を探る旅に出る。相棒はジュリアンの妹ロレッタ。謎を明かす過程はクック流で好みに合わなければじれったいかも。解説にもあるが<我が子を喰らうサトゥルヌス>という絵を途中にでも見ておいたらと思われる。2019/10/13
emitaku
12
クック先生の怖いところは、人間の普遍的な愚かさを何気なくズバリと衝いてくるところかもしれない。淡々と明かされる真実の静かな衝撃は、けっこう身にこたえます。だから、ほかのも読みたくなるのかしら。2015/06/28
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