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内容説明
身寄りもなく、帰るべき家もない老女ジーン。生計を立てる職がなく、社会に向きあうことのできない中年男マイクル。未婚の母となる日も近いのに、恋人に去られた若い妊婦ステフ。ジーンが、長期不在の家に住みこむ留守番係として滞在する屋敷で、まるで運命の糸に導かれるように三人はめぐりあい、家族として共同生活をはじめる。祖母、父、母として。やがてステフの赤ん坊も生まれ、彼らの儚い幻想は形を成してきたかに見えた。だが、その先に待つものは…P・D・ジェイムズが高く評価した、英国女流の系譜を継ぐ、重量級のサスペンス大作。英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞。
著者等紹介
ジョス,モーラ[ジョス,モーラ][Joss,Morag]
1997年に短篇小説コンクールの入賞をきっかけに作家となる。『夢の破片』で、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞。バース近郊に在住
猪俣美江子[イノマタミエコ]
慶応義塾大学文学部卒。英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mitch
5
一人称と三人称で交互に語られるまさに「奇妙な味」の物語。舞台となる「ウォルデン・マナー」はまさにオースティンやクリスティが描く田園地帯の館。語り手の女性はそこのハウスシッターとなり、冬から夏の終わりまでの日々を過ごすのだが……。とにかく一人称部分のゆるゆるとした狂気が怖い。あまりに穏やかに普通に語られるのでこっちも引きずり込まれそうになる。そもそも登場人物のほとんどがあまりに人間的に「病んでいる」。英ミステリならではのあじわいで、陰鬱な気分になるんだけど、またそれが魅力なのかも。 2010/07/07
にゃん
4
主人公のやりたい放題に、やめてやめて、と思いながらも、3人のあまりにも家族然とした幸せな風景に,いつしか「なんとかこのまま住み続けられないものか」などと思うように・・切ないが悪いことは悪い。この結末は仕方がない。被害者にとってはたまらないことだけど。2014/10/21
satooko
4
リヴァトン館のあとがきでモートンが推薦していたので、入手。帯に「重量級サスペンス」とあるように、重い、重い。そして怖いし、哀しいし、切ないし、愚かしい。2013/05/15
アヤネ
3
2003年作品。CWA・SD賞。英マナーハウス。長期留守番係の初老の女性ジーン。今回の「田園の館」の仕事を最期に解雇されることになる。緊張の糸が切れ、架空家族を求める。中年泥棒マイクル、恋人に捨てられた妊婦ステフの3人の同居生活が始まる。。。この作品の感想は、一口には言い表せない。不幸な過去の生い立ち話を織り交ぜながら、今の幸せな家族の生活が描かれる。「壊れかけた人格」達なので、怖い。後半、息つかせない程の緊迫感が続く。子供の誕生・成長、老い、孤独、家族、時の流れなどを考えさせられる重厚な作品。2011/11/18
きうりっち
2
地味ながら読み応えのある作品だった。こういう生活が続くはずがないのに、主人公の3人がのんびり生活を楽しんでいる様子には納得がいかなかったが、3人とものそれまでの根無し草のような人生を考えるとこの無頓着さも頷けるかもしれない。偶然知り合った男女が擬似家族を構成して暮らしながら行く手を阻む者を排除して結局は追い詰められていくという話自体に目新しさはないがそれぞれの不幸せな生い立ちを思うとこの結末が救いかもしれないと思えた。2014/12/04




