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内容説明
オックスフォード近郊の小村に建つダーンリー家の屋敷には、奇妙な噂があった。数年前に密室状態の屋根裏部屋で、全身を切り刻まれて死んだダーンリー夫人の幽霊が出るというのだ。その屋敷に霊能力を持つと称するラティマー夫妻が越してくると、さらに不思議な事件が続発する。隣人の作家アーサーが襲われると同時に、その息子ヘンリーが失踪。しかもヘンリーは数日後、同時刻に別々の場所で目撃される。そして、呪われた屋根裏部屋での交霊実験のさなか、またもや密室殺人が…。犯罪学者アラン・ツイスト博士が、奇怪な事件の真相を暴く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
99
幽霊屋敷で降霊術、というので怪談かと思ったら本格ミステリーだった。「フランスのディクスン・カー」らしく、密室での不可能犯罪、少ない登場人物の中での連続殺人を、きっちりトリックを駆使して収めてみせる。でも長閑さと軽快さはむしろクリスティーぽい気がした。中盤まではあまり新味のない話かと思っていたけど、第3部からの展開にびっくり。このひねり方は面白い。2018/08/25
とろこ
57
面白かった。流石はフランスのディクスン・カー。密室での死体発見、幽霊の出現、霊能力者だと名乗る人物の登場、降霊術…、と怪奇要素がてんこ盛り。それでいて、ごちゃごちゃせずに、伏線は綺麗に回収される。更に、後半で、えっ、と驚く展開が待っている。奇抜さや斬新さはなかったけれど、本格推理としての品格と、本格推理への深い愛情を感じる作品。著者の他の作品も読んでみたい。2018/09/04
hit4papa
48
小さな村で起きる連続殺人は、著者がジョン・ディクスン・カーの熱烈フォロワーというのもあって、密室殺人やら降霊術やらで、まさにカーの世界てんこ盛りです。登場人物が少なく、犯人が限られているのですが、犯人もそしてトリックも全くわかりません。真相が判明するくだりは、なるほどねぇと頷くしかないのです。作品そのものの読ませ方が一風変わっていて、名探偵登場からの謎解き、そして最後はあっと驚く捻りを見せてくれます。ちょい緩めのトーンで書かれてるのが味なんでしょうか。シリーズ作品を読みたくなりますね。お見事です。2018/06/05
ち~
34
かつて密室殺人があった部屋があり、幽霊屋敷と噂される屋敷に新たな住人が越して来た。直後、隣人が交通事故で死亡。その主人が襲われ、息子は失踪と事件が続く。新たな住人は霊能力があり、幽霊屋敷で交霊会が行われるが、またもや密室殺人が…。犯人と思われた人物が殺されたかと思えば、生きて現れたり、同じ人物が同時刻に別の場所で目撃されたり、混乱させられる事柄が続出する。「あ、こういう仕掛けあるよねー」と思えば、最後にはドンドンドンデン返しが。ディクスン・カーやアガサ・クリスティを思わせる少し懐かしいミステリーだった。2018/12/30
geshi
33
ディクスン・カーへのリスペクトで作られた本格ミステリーの意欲作。密室殺人、分身した人間、蘇った死者、雪の密室、黄金期の香りすら漂う美味しいところ全部乗せのサービス精神にきりきり舞いしながら楽しんだ。オカルト+不可能犯罪の釣瓶打ちに検討の余裕を持たせず、シンプルな困難の分解の密室トリックに気付かせない。最後にもう一つ仕掛けを用意してフィクションラインを揺るがして、ラスト一行で切れ味よく終わらせる、隅から隅まで本格愛の詰まった作品。2017/03/09