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内容説明
少女は必死に走った。最終バスに乗り遅れると、門限に間に合わない。だが、バスは無情にも目の前を走り去っていく。翌朝、少女は死体となって発見された。ノーフォークの連続絞殺魔“ホイッスラー”の４番目の犠牲者だった…。ダルグリッシュ警視長は、亡くなった叔母の遺産を整理するため、休暇をとってノーフォークの海ぞいの寒村を訪れた。青い海を背景に、午後の光を受けて金色に輝く松林や修道院廃墟。そしてその向こうには、ラークソーケン原子力発電所の巨大な灰色の建物が、岬を睥睨するように聳え立っている。この平和な光景に、“ホイッスラー”の影などどこにも感じられない。だが、それはたんなる幻想にすぎず、死の脅威がこの岬にも襲いかかろうとしていることを、ダルグリッシュは知る由もなかった。現代本格ミステリの頂点に立つ著者が人間の心に巣くう策謀と欲望を重厚な筆致で描きあげた話題の本格巨編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
71
ノーフォークの原子力発電所の町で起こった連続婦女殺人事件に続く殺人事件の発生と顛末の話。名刑事ダルグリッジが「詩人」となってジャガーを乗り回すなどど夢物語のよう(ウソでしょ！）。登場人物の一人一人について書きたいことを強弱付けずに細大漏らさず丁寧に書こうとする作者の重い文章でLGBT、原発反対運動、組織内の男女関係など、話題もてんこ盛り。だが、なぜ自殺者が連続殺人犯と分かったのか、その後の殺人の犯人の動機が弱いのでは？海での二人の女性の事故も唐突だ！等々、納得感がやや不十分ではないかと思った。推理100。2023/01/09
星落秋風五丈原
29
まさかのP・D・ジェイムズ作品にシリアルキラー登場！と思わせて、骨組みは従来シリーズを踏襲。最初にクローズド・サークルの登場人物を紹介。研究所所長アレックス・メイヤー、その姉で料理研究家のアリス、アレックスの秘書キャロリン、アレックスと昔訳ありで研究所の管理部長代理ヒラリー、運転管理部長マイルズ、作業班の冴えない男性ジョナサン、反原発運動家のニール、ニールの同居人で子持ちのエイミー、ヒラリーに追い立てを食らっている画家のライアンとその娘テリーザ。複数の登場人物から嫌われているのがヒラリーで彼女が殺される。2021/11/01
紫草
7
ダルグリッシュものを、この頃ずっと読んでいるのですが。今まで、P・D・ジェイムズって暗くて重くて読むのが大変と思ってました。でも、そんな感じはなくてとにかくおもしろい。シリーズものだからかしら。といっても、この｢策謀と欲望｣はダルグリッシュ以外レギュラーといえる人はいないのだから、おなじみのメンバーだから、とっつきやすいというわけではない。とても濃密なので、サクサク読めるというのではないけど、けっこう長い話が苦にならず、むしろうれしい、ずっと読んでいたいと思いました。2015/01/29
bibliophage
4
「人間は自分の心の策謀と欲望から自由になれるものなのでしょうか」クリスティを読むような気で読んでいる（もちろん登場人物は多いし、会話も密、描写も濃いです）と、途中からぶっ飛んでしまいます。ダルグリッシュはジャガーに乗っているし、殺人は原子力発電所が絡み、食器洗い機が登場します。2021/07/18
Jimmy
4
「女には」しか読んでいなく面白くなかった記憶のP.D.ジェイムズですが、これは面白かった。他の作家なら半分のページでまとめただろう、てな具合の書き込みのすごさ。まどろっこしさよりも、小説を読んでいる、って満足感がありました。2020/09/04
