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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
124
メグレ警視の物語ではいつも雨が降っていることが多い。この雨は犯人を追うメグレの心象風景と重なり合う気がする。この作品はメグレ物の傑作のひとつで、殺された若い女性の悲しい生涯が静かに浮かび上がってくる。エラリー・クイーンのようなどんでん返しはないが、結末で明らかになる殺人事件の真相は深い余韻を残す。刑事のロニョンのような脇役の描き方にも厚みがあって、シムノンが巨匠と呼ばれる理由がよく分かる作品だった。2016/06/13
kawa
31
1950年代のパリを舞台とする古典ミステリーの名作(1954年版)。本年3月の映画公開に伴い新訳版も発刊。地元図書館には旧版のみで、こちらをやむを得ずリクエスト。ちなみに旧版は絶版で、ネット検索すると値段にプレミアムが付いているようだ。不幸な生い立ちのうら若き女性の殺害事件を巡り、主人公のメグレ警視の組織力を駆使した立体的操作と、ノンキャリ地元署のロニョン刑事の地を這うような捜査という対照の妙から、意外な結末に至るというところが読みどころか。機会があれば新訳版と比較しても面白いかも知れない。2023/03/17
kinshirinshi
24
映画化されたと聞いて読んでみた。深夜のパリで発見された身元不明の若い女性の死体。彼女は一体何者なのかーーやがて「現像液に浸したネガのように」浮かび上がってくるその正体は、若さや美しさを武器にできず、パリの片隅に忘れ去られた孤独な娘の姿だった。些細な理由で殺されたことにより、彼女はメグレの関心を惹き、初めて物語の主役になれたのだ。殺人犯を追うのではなく、被害者の生涯に寄り添う叙情豊かな作品。一匹狼の陰気な刑事・ロニョンが、ネガティブすぎる空気を醸し出していて、異色。2023/01/29
maja
18
深夜のパリ、小さな広場で若い女の死体が発見された。安物のサイズの合わないドレスを身に着け靴も片方ない彼女。メグレ警視は雨に打たれて投げ出されている娘を見て事件が複雑な様相を持つのではと思うのだ。警視と担当区警部ロニョンが辿っていく娘の足跡。ひとりアウェイ感漂わせるロニョン警部の味とともに次第に露わになってくる娘の生涯がもの哀しい。2024/01/14
Iwata Kentaro
16
廉価でまとめ買いしたシムノンを少しずつ読むのが楽しい。人間への洞察を促す上質なミステリーは下手な資料や論文読むよりコロナ対策に資する。今一番必要なのは「洞察」なのだから2021/01/11