出版社内容情報
『万葉集』に残された歌から、詠みびとの窮乏や苦難、その死生観を考える
死について考えることは、生について考えること。死後の世界は、想像するしかない。しかし、生の終わりとしての死を考えることによって、私たちは初めて、生をはっきりと自覚することができる。七世紀後半から八世紀の中頃を生きた万葉びとは、苦難や絶望をどうとらえ、生と死について、どのような考えを持っていたのか。残された歌を現代の視点で訳し、鑑賞しながら、今を生きる私たちの心にもある愛や哀しみへの思いを明らかにしていく。
【目次】(変更になる場合があります)
第一回 楽しく、楽しく生きよ ~讃酒歌十三首の世界
第二回 妻たちの挽歌 ~天智天皇挽歌の世界
第三回 葬送儀礼と荘重なる挽歌と ~日並(ひなみしの)皇子(みこと)挽歌の世界
第四回 愛と別れと ~石見相聞歌の世界
第五回 無念の死を語り伝える ~有間皇子挽歌の世界
第六回 新羅国からやってきた尼の死 ~尼の理願の挽歌の世界
第七回 老いと死を生きる ~山上憶良の老いと死と
第八回 人生をふりかえる ~沈痾自哀文の世界
第九回 貧しさの中で生きるということ ~貧窮問答歌の世界
第十回 子を悼む心 ~男子(をのこ)古日(ふるひ)挽歌の世界
第十一回 死者と同心となる ~熊凝(くまごり)を悼む挽歌の世界
第十二回 散骨と拾骨と ~巻七挽歌部の世界
第十三回 ふたたび、楽しく楽しく生きよ ~死をめぐる断章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
20
日本の古典文学で最も興味があるのは万葉集である。1300年前の人々、天皇から一般の人まで、様々な人の歌に託した思いを知ると、長い歳月が経っているにもかかわらず心に届いてくる。テキストは、別れや死と向き合った歌を中心に取り上げられており、万葉集研究の第一人者である上野誠の解説が分かりやすいのに加え、歌の原文と訳文が並列されているのが親切である。これを機に万葉集を読んでみたくなった。2024/04/29
さちめりー
3
最近また聴き始めたNHKラジオの教養番組のひとつ「こころをよむ」での著者上野誠さんの親しみやすい語りと解説に惹かれてテキストも手に取った。内容は放送とほぼ同じなので振り返る形となった。今から1350年前から1250年ぐらいも昔の人々の書き残した歌を今でも読めることができてその思いをくみ取ることができることが素晴らしい。NHKの教養ラジオは優秀で魅力的な先生が多く担当されていて、誇らしい教養世界を一般に提供してくれている素晴らしいプログラムなのでずっと存続していてほしいと切に願っています。2024/07/27
れいまん
2
現在、ラジオG2の「こころをよむ」の講座のテキストです! 上野誠先生の万葉集愛が溢れています! 第一回目の大伴旅人の讃酒歌の読み解きから、ハイデガーとサルトルの実存主義が出てきます。様々な挽歌からは、人の死に対する現代にも通じる読み解きが、ご自身の体験からも引き出され、思わずわたくし自身にも゙迫って来ます 良いお講義でした2024/04/28