出版社内容情報
未曾有の大災害である関東大震災から、今年でちょうど100年。10万人以上の死者・行方不明者、190万人以上の被災者が出るなかで、当時の文化人たちは次々と体験談を発表していた。彼らが見て、感じた「大都市災害」を読み解きながら、どのようにして復旧に向かっていったのかを考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
23
タイトルに『文豪』が入っていることにいささか違和感がある。テキストに登場するのは作家だけでなく、詩人や歌人、哲学者、画家が登場するからである。個人的に、『知識人』でよかったのではないかと思う。とはいえ、関東大震災を体験した知識人の記録を地域ごとに上手くまとめている。関東大震災で、東京は多くの人が犠牲になっているが、地震による犠牲よりもその後に起きた火災による犠牲が多かった。地震による直接的な犠牲は横浜や鎌倉の方が多かったことが分かる。関東大震災から100年を迎えた2023年に読む意義がある一冊だった。 2023/12/22
ヒラP@ehon.gohon
12
関東大震災を当時の文豪たちは、どのように体感したか、いささかサイドストーリーのような、サブテキスト的な感覚のまとめにも思えるテキストです。 ただ、自分事として語られた内容の多くで、東京墨田区の末世的な状況だけでなく、東京大震災のもたらした被害範囲の広さを再認識しました。 自警団による朝鮮人虐殺、朝鮮人と勘違いされた人への殺害など、心痛む記載も目につきました。 大杉栄の死と大震災もリンクしました。2024/09/06
yumani
3
ラジオもテレビなかった頃の膨大な数の絵葉書や記録の中から、被災した『文豪たちが書いた関東大震災』の記録を13回にわたって放送したテキスト。※残念ながら私が手にしたのは放送終了後。最近青空文庫にて関する著作を読み臨場感に圧倒され続けたのがきっかけ。期待が大きかった分、違和感はあるがテキストゆえ仕方ないのかもしれない。冒頭の「関東震災全地域鳥瞰図絵」は『吉田初三郎鳥瞰図集 大正の広重が描いた全国名所図絵』でも別格の一枚。章ごとの地図や写真は参考になる。〈東京ではない地域〉まで及んでいるのがありがたいと思った。2024/03/30
Ise Tsuyoshi
3
45人の文章を紹介したラジオのテキスト。地図、写真も充実していて単独で読んでも面白いと思う。▽天譴という考えへの菊池寛の批判「もし、地震が渋沢栄一氏の云う如く天譴だと云うのなら、やられてもいい人間が、いくらも生き延びているではないか」▽吉野作造が朝鮮人虐殺に最初に言及しているのは流石の見識。「気の毒な程度に於ては、民衆激情の犠牲になった無辜鮮人の亡霊に及ぶものはあるまい」▽地震で赤ん坊を置いて逃げた芥川龍之介「人間最後になると自分のことしか考えないものだ」…そういう人ですよね、あなたは。そりゃ妻は怒るわ。2024/02/12