出版社内容情報
『法華経』の思想を学びながら、宮沢賢治作品の核心に迫る。
わずか37歳の若さでこの世を去ったにもかかわらず、今なお語り継がれる宮沢賢治。その詩や童話の数々は人々が危機に見舞われるたびに読み直され続けてきた。心に響く賢治の生き方や文学作品を支えたものは何だったのか。家業へのうしろめたさ、農業指導員としての人生、最愛の妹・トシの死……数々の苦しみのなかで、なぜ懸命にいのちと向き合い続けたのか。そこには『法華経』をはじめとする仏教の存在があった――。宮沢賢治没後90年、賢治と宗教とのかかわりを追い、宗教的世界観から賢治作品を味読する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てん
15
宮沢賢治の作品や人生を、仏教との関わりから読みとく。生家が浄土真宗の檀家総代であったほどであるが、賢治自身は日蓮宗、法華経に深く帰依した。それが作品や生き方、家族や周囲の人との関わりに表れているという。仏教の影響が全てではないが、なるほどそういう考え方もあるかと。賢治については何冊か本を読んだが、多くの研究者がそれぞれの立ち位置から光を当て、賢治がさまざまな色を放つようだ。2023/10/11
GELC
7
100分de名著で日蓮の手紙を観て、法華経に説かれた、ありとあらゆるものが宇宙の真理の現れで、我々が生きている娑婆世界こそが浄土という考え方に興味をもっていたので、賢治の菩薩を体現したかのような生き方に強く惹かれた。家族や自らの出自に対する葛藤や、妹との死別などの苦しみを抱えつつも、理想に燃え気高く生きた様にあこがれる。作品を深く読んだことが無いので、近いうちに手に取りたい。2023/04/11
ミー子
5
宮沢賢治の人生や作品のベースには、法華経(仏教)の教えがあることを、聞いたことはあったし作品も読んだことはあったけど、仏教学者の立場から深く書かれた本は初めて読んだし、初めて深く知った。遠藤周作や三浦綾子のように、キリスト教の教えがベースにある文学作品があるのは知っていたけど、仏教の教えがベースにある文学作品もあることを知り、とても興味深かった。2023/11/25
りっとう ゆき
1
けんじさん、幸せだったのかな?もっと楽に生きられたら良かったのに、って考えちゃうけど、でも、じゃなきゃこんなに胸を打つ作品は生まれなかったのかな。最期は家族や友人たちに囲まれててそれが読んでて救いだった。2024/06/06