出版社内容情報
豊臣秀吉、そして大清皇帝ホンタイジによる侵略。そのとき朝鮮王朝はどう動いたのか?
「朝鮮は、地政学的に攻められやすく、また朱子学の教義に凝り固まっていた」――その言説は本当か? 世界の今を解くカギは、すべて歴史の中にある――。誰もが一度は耳にしたことがある「歴史的事件」と、誰もが疑問を抱く一つの「問い」を軸に、各国史の第一人者が過去と現在をつないで未来を見通すシリーズの第10弾! 豊臣秀吉の朝鮮出兵を意味する壬辰戦争、そしてその後の後金および大清皇帝ホンタイジによる丁卯・丙子の乱は、朝鮮王朝に何をもたらしたのか? 明清交替という大変動期のなかで軍事・財政改革にとりくみ、危機を乗りこえた、知られざる朝鮮王朝史を見る。
[事件の全容]
第1章 朝鮮は、なぜ大清の侵略を受けたのか?
[事件の歴史的背景]
第2章 朝鮮は、侵略をみずから招いたのか?
[同時代へのインパクト]
第3章 朝鮮は、どんな国に生まれ変わったのか?
[後世に与えた影響]
第4章 丙子の乱は、どのように記憶されたのか?
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
電羊齋
17
丙子の乱の経過、朝鮮王朝の建国、秀吉の侵攻、後金・大清の勃興といった歴史的背景、さらには乱後の動向と丙子の乱についての歴史的記憶が取り扱われている。本書では、秀吉と大清の侵略という相次ぐ外患に内政・外交両面で対処しつつ、兵制改革、火器の導入など意欲的な軍備再建・軍事改革を行う朝鮮王朝が描かれる。そこには「朝鮮は政争にあけくれていたので侵略を受けるのも当然であった」、「朝鮮が朱子学の教義にしたがい、冷静な現実判断ができなかった」という従来のステレオタイプとは異なる朝鮮王朝の姿が描かれている。2025/05/17
MUNEKAZ
16
清の朝鮮侵略「丙子の乱」というマイナーな(失礼)出来事で一冊出てしまうのが凄い。短いが盛りだくさんな内容で、「党争に明け暮れた朝鮮が、時代を読めず清に惨敗した」というテンプレ説明の再考を促す。王との親疎で支配層がガラッと変わるのだから、党争はやはり激しく弊害もあるのではと思いつつ、朝鮮が丙子の乱後に行った「軍制改革」などは興味深かったりする。日本でも「信長・秀吉の軍事革命」なんてのたまう識者もいるが、欧州のみならず東アジアでも同時代的に軍事の大変革が起こっていたことがよくわかる。2025/06/26
さとうしん
14
丙子の乱の背景と経過、その後の展開に加えて丙子の乱の歴史的な記憶まで扱っているのが今風ということになるだろうか。「朝鮮が常に「外患」に悩まされ、「儒教」を信奉するがゆえに適切な対応が取れなかった」であるとか「朝鮮が政争に明け暮れる中で前後して日本や清の侵略を受けた」というような、専門家すら陥りがちなステレオタイプな理解に疑問を突きつけているのが良い。2025/05/13
みなみ
10
丙子の乱の評価。朝鮮王朝は政争にあけくれ、また朱子学にとらわれて客観的な情勢分析ができなかったみたいなテンプレがある。本書では、日本では韓国のアップデートされた学説が入ってこないので従来のテンプレ通りの理解に留まっているという指摘がある。明の崩壊と清の成立、清と朝鮮王朝の関係、朝鮮王朝の軍制改革など新しい学びが沢山あった。どうしても時代劇ドラマのイメージから仁祖の印象が宜しくないのだが、実際にはだれが無能で誰が悪いみたいな紋切り型の話ではないのだと分かる。2025/06/01
竜王五代の人
3
李氏朝鮮に入れ込んだ感あり。当時は月の上旬は「初」を付けて初二日とか呼んでいたからって、別に踏襲する必要はないと思うのだが、そういうところがどうも引っ掛かる。2025/06/30