出版社内容情報
他者だけでなく、自分も利する「利他」の本質とは。
「利他」という言葉は「自分ではなく、他者のためにおこなうこと」だと捉えられがちだ。しかし、日本の起源から利他を見つめ直してみると、それとは全く異なる姿が見えてくる。空海の「自利利他」、孔子の「仁」、中江藤樹の「虚」、二宮尊徳の「誠の道」、エーリッヒ・フロムの「愛」……彼らは利他をどのようにとらえ、それをどう実践して生きたのか。彼らの考える利他は、現代とどう違うのか。「自分」があってこその利他のちからとは、どんなものなのか。日本を代表する批評家が、危機の時代における「自他のつながり」に迫る、日本初・利他の入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
21
自分を愛して大切にし、その中心に何かしら揺るぎないものを創りあげなければ利他的な行為に至る「こころ」って、きっと完成しない。何故他人のために何かをしたくなるのか。自分はそこを掘り下げていくと最終的には「格好つけたいから」というところに行き着くけれど、その格好良さを見せるのは誰なのか。それは自分を一番近くで見ている自分自身。そして自分を今ここまで導いてくれた多くの敬愛する人たち。なるほどあの人たちの前で格好悪いことはしたくない。利他的な行為って本当は極めて利己的なのだ。自分の格好良さのため。尊厳のため。2023/01/02
ceskepivo
18
次の言葉がガツンと響いた。「私たちは、なぜ成功や名誉、富、権力に飲み込まれていくのか。それは自分自身や他者とつながる前に、社会の価値と「つながる」から。造られた成功や幸福を真実だと思い込むから」。2024/08/28
かず
15
大分前に「読みたい本」に登録した本書を図書館で見つけ、資格の学習に励む昨今の私としては異例の6日間で読み終えた。所々付箋をしつつ読んだが、終盤までは特段蒙を啓かれた感はなく、自己認識が正しかったことを追認するのみだった。終盤で本書を読んで良かったとようやく思えた。それは「利他を為すには真に自己を愛することが必要だ」という結論であった。今年、私もそれを体得したから、実感の伴う読書だった。表紙に「大切なのは、まず自分を信じること」とある。要は、日々誠実に修練していれば、自然に会得するものだと思う。2024/04/20
三井剛一
15
入門書ではあるが、想像以上に難しかった。特に東洋哲学については、基礎知識が足りず苦労した。 「利他」について、過去の偉人の言葉、考えをもとに、まとめられている。 「自分を愛する」ことを土台に、「他者を愛する」ことができる。自己愛は、利己に繋がると考えてしまっていた自分には、変わるきっかけになった。 全てのものを等しく思えるように。 自分を信じることからはじめよう。 また再読せねば。2023/01/03
YT
13
西洋・東洋の思想から、「利他」とは何か考える。 利他の根幹は〈愛〉にあり、自他が不可分で深くつながること、他人を愛するために自分を愛する必要があること。それを分断するものは富や名声、権力などの社会的な繋がりであり、それらに飲まれていくことで愛するということを見失ってしまい、自分をも見失ってしまう。自分を愛することで自分の存在を固有にすることができる。そうして他者と調和していき、愛という繋がりが利他の本質なのかなと。 論旨は明確だが、自分の中にこの議論を落とし込むのは時間のかかることだと思う。2024/03/12