出版社内容情報
「全部」を知らなくとも、理解できる道がある。
世界の三分の一もの人びとが信仰しているのに、日本人にとってはよく分からないキリスト教。しかし、聖書やキリスト教の「核心」に光を当てて、そのつながりを「よむ」ことができれば、理解への道が驚くほどひらけてくる。一神教の鍵「アブラハム」とはどんな人物なのか? 膨大な聖書のどこを読めばいいのか? 聖書の教えはどんな人によって受け継がれてきたのか? それらに通底しているキーワード「旅人の神学」とは? 本格的かつ平易な解説で注目が集まる東大教授による、格好のキリスト教入門。巻末にはキリスト教の理解を深めていくためのブックガイドを収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
100
聖書を自分で読むためのガイドとして、読み解きのヒントをくれる。「旧約聖書」は律法書、歴史書、文学書、預言書からなる紀元前数千年にわたる歴史書。「カナンの地へ旅立つアブラハム」ギュスターヴ・ドレ。「新約聖書」は、4つの福音書、使徒言行録、書簡集、黙示録からなり、イエス・キリストについての教えと、説いた教えからなる。「善きサマリア人のたとえ」ゴッホ、「放蕩息子のたとえ」、「エマオの晩餐」ティッツィアーノ。「書斎の聖アウグスチィヌス」ティッツィアーノ。現在教皇のフランチェスコ「橋をつくる」。聖書を読みましょう。
樋口佳之
57
神は自らの卓越した在り方に自己満足して上から人間を見下ろしているような存在なのではありません。…神自身が自分をむなしくして人間(イエス・キリスト)となり、むなしい人間と連帯してくださった。そのことに心を動かされた一人ひとりも、自ら貧しい者やむなしい者と連帯して…これこそ、キリスト教の最もオリジナルで最も核心的な特徴/周縁となられた神に倣い、同じように周縁に出向いていくことでこそ、「弱い者」「小さい者」と共にある神と出会う可能性…そこにこそ真の喜び/著者の語る核心的な特徴、一般的な理解という事で良いのかな?2022/03/02
venturingbeyond
32
『トマス・アクィナス 理性と神秘』の著者・山本芳久先生のキリスト教神学入門編。膨大な蓄積のあるキリスト教神学を、「旅」、「共にある神」、「橋を架ける(Pontifix)」などの当意即妙のワーディングで、旧約・新約やアウグスティヌス『告白』からの引用に重ねて、活き活きとしたイメージの下に平易に語り、信仰を共有しない読者にも、キリスト教信仰の特徴をしっかりと理解させるものとなっている。受苦(passion)と共感(compassion)の宗教としてのキリスト教の特質がすっと理解できる好著。2022/03/09
三井剛一
12
キリスト教・聖書について濃い内容をコンパクトにまとめられている。 旧約・新約聖書などの書籍からの引用と著者の解説があり、予備知識なしでもわかりやすい。 引用自体が大変興味深く、学びを深めたいと思わせてくれる一冊。2022/03/31
hakootoko
11
宗教とは固定観念を克服して新たな視界を開く原動力、と「はじめに」にある。動的な神とその似姿としての旅人である信仰者たちは、変化をいとうことなく、歩み続ける。例えば、よきサマリア人の喩えは、隣人とは「範囲」の定まった静的なものでなく、そのときそこで手助けすることで、動的に、隣人に「なる」ことを教えている。ベルクソンを最近読んでいるので、そうだったのかキリスト教ってなった。アウグスティヌスの時間論や記憶論が神とどう絡んでいるのか気になってきた。2022/10/13