出版社内容情報
「世界最高峰の大作」登頂に挑む
20世紀ドイツ文学の最高傑作『魔の山』。作家トーマス・マンをノーベル文学賞に導いたとも言われる本作には、「生と死」「啓蒙とエロス」「秩序と混沌」「合理と非合理」がうずまく現実を前に、無垢な青年ハンス・カストロプが葛藤する姿が描かれている。「魔の山」とはいったい何を象徴しているのか。価値観が混沌とする世界で、人はどのように生きていけばいいのか。長大かつ難解な書として有名な世界文学を、余すところなく読み解く!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
100
魔の山に描かれている主題は、生と死、忘却と想起、物語が持つ二重の時間であり、更にキリスト教における黙示録と使徒ヨハネであると、小黒康正教授は述べる。黙示録との関連が教授の専門だということだが、今回の番組では触れていなかった。1924年に刊行された魔の山は、執筆から完成まで12年掛かった。その間にドイツは第一次世界大戦を戦い敗戦を経験した。主人公は23歳の青年ハンス・カストルプ。その後の7年間を描いた小説だが、時間の流れは読み進める毎に早くなる。1929年にノーベル賞を受賞した際、受賞作品から外された作品。2024/05/29
燃えつきた棒
34
もとより、この企画がなければ、僕はほぼ間違いなくこの小説を読まずに終わっただろう。 その意味で、この番組には感謝している。 また、本書で小黒先生が展開する読みにも、深読みの楽しさが溢れている。 ハンスを使徒ヨハネとみる読みも、「七」をめぐる読みも、目から鱗の読みだった。 だが、しかしだ。 《君は予感に満たされながら「陣地とり」をすることで死と肉体の放蕩の中から愛の夢が生まれる瞬間を経験した。このように世界を覆う死の祝祭からも、雨模様の夜空をいたるところで焦がす熱病のようなひどい劫火からも、➡︎2024/05/15
Mark
29
7年ほど前に入院したとき、文学好きの親友からお見舞いにプレゼントされた上下巻のセット。これまでに何度か読み始めたものの中途半端に挫折し、書棚の肥やしになっていました。このテキストで粗筋を知り、魔の山のぼりの知識を得た思いです。再度、チャレンジしてみます。それにしても、入院のお見舞いに『魔の山』とは、いまさらながら親友の洒落っ気に感心させられます。2024/05/15
かふ
19
ドイツの思想史的小説だろうか?マンは最初はデカダンに溺れる青年の悲劇を描こうとした。そこに第一次世界大戦の敗北によって、自身の死生観が変化していく。それは兄のハインリッヒとの哲学的な議論の中で深められていく。マンの背後にあるキリスト教的な世界観を物語ったハンス=ヨハネ黙示録というべき本。その山は世界文学屈指の高さなのだろうか?https://note.com/aoyadokari/n/n9387d021b3142024/06/15
石橋陽子
16
文学最高峰の『魔の山』の回。我が読書歴は2年なので敷居が高かった本だが、100分de名著で扱われるということで少しだけ顔を出してみた。指南役の小黒さんが平素な文章で分かりやすく解説してくれているお陰で大変面白い。分からないのが前提で、何年かかけて読み進め返読等をし、少しでも人生に潤いがあればしめたものという思いに至り『魔の山』本編を手に入れた次第。療養所ベルクホールで何を思うのか楽しみだ。こちら、社会の複雑な歩みと人類の精神史の総体が詰まっており険しい山である。下山せずに少しずつ魔の山を登頂しようと思う。2024/05/09
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