出版社内容情報
かつて激しい差別と偏見に晒されていたハンセン病。その病に罹患し、社会から隔絶された絶望的な状況の中で、若き作家・北條民雄が生きる希望を見出したのは「書く」ことを通してだった。みずみずしくも巧みに練られた物語の中に、絶望の底にあってもなお折れない「生きる」意志を読みとく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
99trough99
30
撮りだめした4回の放送を見ては読み、でようやく読了。放送中に言及されていなかった細やかな内容も込められており、濃い内容だった。最後に伊集院さんが言っていた「50ページ足らずの本を100分?と最初思いましたが、終わってみると、もっと時間が欲しかった」に納得の濃い内容。静かな部屋で改めて、「いのちの初夜」を再読しようと強く思った。2023/03/21
no.ma
18
「人間ではありませんよ。生命です。生命そのもの、いのちそのものなんです。…あの人たちの『人間』はもう死んで亡んでしまったんです。ただ、生命だけがぴくぴくと生きているのです。…」。読み終えてから何年も経ちますが、この佐柄木の言葉は心に深く刻まれるように残っています。「いのちの初夜」は、ハンセン病に罹患している著者の希望の書であり、生きるとはどういうことなのか全ての人に問われる書でもあると思います。まさに名著。中江有里さんの解説も良かったです。2023/03/02
かやは
13
100分de名著は長年視聴していたが、テキストを買うのは今回が初めて。それだけ、北条民雄に魅せられてしまった。濡れたような、艶っぽい文体という表現に深く肯首した。正直いのちの初夜は、ハンセン病の壮絶な実態よりも、北条の文体の美しさに強く惹かれてしまう。解説の中江有里さんのお母様のお話も、非常に胸を打たれた。文学って素晴らしい。2023/02/12
けいこ
12
これは、川端康成が好きになりますね。ハンセン病を患った北條民雄を偏見の目で見ないで、その作品を評価してくれた事に。北條に生きる力を与えてくれた事に。テキスト内で紹介された『すみれ』も生きている事への讃歌みたいな物語で、とても印象に残りました。2023/02/27
どりーむとら 本を読むことでよりよく生きたい
12
本の表紙に「書く」ことで見出した、絶望の先にある希望。どうしようもないと思い、将来に対して不安を抱くことが多い。その人に対して生きる光を与えることができるかもしれない一冊であると感じた。 主人公はハンセン病に罹患し社会から隔絶された施設に入所することになる。本人はその夜、自分の将来に対して悲観し自殺しようとする。当時の施設のハンセン病の実態の一端が描かれている。その中で自分が置かれている実態を書くことに自分の生きがいを見出した。 自分の思いを表現することで、メタ思考をすることが生きる希望につながる。2023/02/15