出版社内容情報
「究極の幸福」はどこにある?
「人はいかに生きるべきか」を徹底的に考え抜き、2000年以上も生き残った古典中の古典。人生の目的はなんだろうか? 幸福はいかに獲得しうるのか? 正義とは、勇気とは、友愛とは? 古代ギリシア最高の知性による思索を、平明かつ本格的に、丹念かつ大胆に解きほぐす。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
102
アリストテレス倫理学を読み解く講義は、現代でも2400年前と変わることのない「幸福」「徳」「友愛」とは何かについての話で面白かった。性格や人柄エートスは習慣エトスの積み重ねによって形成されることや、人間が持つ最も優れたものは「理性」であり、それが「知ること」に幸福を感じる理由である、「徳」は生まれつきあるものではなく活動の反復から身につくもの、友愛ピリアーの条件とは、善きもの、快いもの、有用なもののいずれかだと考えられる、など。「出会い続けることのできるものと出会う」のが哲学書であれば、それも幸福ですね。2022/07/04
れみ
50
NHK-Eテレ「100分de名著」のテキスト。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの「二コマコス倫理学」について。解説の山本芳久さんの言うように、こういうジャンルのものにしては「読めるな」「解るな」と感じるところが多かった。「こうするべき」「こうでなければ」という義務感や真っ直ぐさが突き詰められるとその純粋さには怖さが伴うけど、そういうものとは違って柔軟さがあると感じた。番組での伊集院さんと山本さんのやりとりや、親しみやすい雰囲気での小林聡美さんの朗読も楽しめた。2022/05/25
ころこ
50
ハイデガーの直後にアリストテレスなのは、製作者側は意識しているのでしょうか。カントに代表される義務的倫理学が今のヨーロッパ的(ヘブライニズム)な優等生の倫理だとすれば、おおらかな(ヘレニズム)な幸福論的倫理学は「徳」「中庸」「友愛」といった言葉の響きからもいつものヨーロッパ的な議論とは一線を画しています。今回改めて読んでみて、スピノザ『エチカ』と似ているなという印象を持ちました。放送をきっかけにして読み易い『ニコマコス倫理学』を読んでみる読者が多いという想定のもとに、全体の構成が分かるようになっています。2022/05/02
かず
22
目から鱗が落ちたのは倫理学には2系統あるということ。兎角倫理学とは「あるべき」ものを追求するものと思われがち。これはカントの唱えた義務論。一方、アリストテレスが唱えたものは「幸福こそが最高の善である」とする「幸福論」。で、幸福とは何か。徳の実践とそれによる皆との友愛ある生活。前回のハイデガー『存在と時間』と連関する内容だと思う。結局、人間が幸福に生きるためには、全てを愛し、敬し、社会での責任を果たすこと。私はそう思い、自己修養の最中。浄土教や法華経、それと儒教から学んだが、洋を問わず共通だという事だろう。2022/05/14
buuupuuu
19
テクストを多く提示しながら分かりやすく解説されているので、親しみやすさを感じる。人柄の善さに基づく友愛と快楽や有用性に基づく友愛との間に優劣の差はあれど、どちらも友愛として認められるというのが、アリストテレスの解釈としても正しいし、私達の経験にも適っていると、著者は言う。確かに、利己的と言ってもいいような動機から付き合う人々に対しても、私達はしばしば相手の善を願うことがあるのだから、頷ける主張だと思う。2023/03/21