出版社内容情報
せめぎ合う「光」と「闇」の物語
平清盛を絶頂として、平氏はなぜ栄華を極め、なぜ衰退したのか――。源平争乱を題材に、「光」の貴族と「闇」の武士のせめぎ合いを描いたフィクション『平家物語』。思いを残した死者たちの鎮魂のために琵琶法師が語り継いだ物語を、運命論・人間論・組織論として読み解く！ 講師自らが朗読を担当、琵琶の音色と迫力ある映像が、放送後、大きな反響を得た2019年5月「100分de名著」のアンコール放送。
※2019年5月のアンコール放送です。放送時のテキストがそのままご利用いただけます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shoko
15
「別冊」というのは増補・愛蔵版の位置付けで本書と内容はほとんど同じだった。よくわからずに買ってしまったのでこちらも登録。／唯一の違いはコラムの有無。一つのコラムで、平家物語の読み本系の異本である『源平盛衰記』にある、龍宮城伝説に触れられたのはよかった。安徳天皇があまりに可哀想で、龍宮城で暮らしていてくれたら嬉しいと私も思います。2022/09/21
零水亭
8
TV放送も観ました。平忠度､斎藤実盛の話がなかったのは残念ですが､尺の都合で已むをえませんネ。どのエピソードも凄く説得力がありました。余裕があれば､安田氏の本､読んでみます。 TV放送と同時期に初めて泉鏡花「歌行燈」（能が絡んでくる）を読みましたが、「能」の世界にも触れてみたくなりました（「能→ お金かかる」と勝手に思い込んでましたが、図書館本とTVで何とかなるか…）。2021/03/29
しょうゆ
8
100分de名著を見てテキスト購入、さらにアンコール放送も視聴と、どっぷり平家物語に浸かってしまった。安田登さんの解説は視点が独特で面白いですね。能楽師ならではの知識が散りばめられています。平家物語は二項対立が多い印象です。ダメなリーダーと良いリーダー、地獄行きの人と極楽往生できる人、山の源氏と海の平家などなど。仏教的、儒教的なニュアンスが多いのも面白かったです。2020/11/30
色々甚平
7
能楽師が書いているという点が面白い。なので、平家物語と関連のある能の作品も、章やテーマに沿うものが文章の比較などで取り上げられている。気づきにくい話の見えない所に存在している浄土宗の仏教要素には、このような副読本がなければ気づかなかった。最後に平家物語を語った琵琶法師の役目・力について指摘されているのが良かった。これで、物語として耳なし芳一が、なぜ平家の霊に平家物語を聞かせたのかが釈然とした。2021/07/13
うだうだ
4
著者は能楽師の安田氏。文学や歴史学を専攻した人とはまた違う平家物語を味わえる。鎮魂の物語としての平家物語を、琵琶と霊の話も交え説明したところもなるほどと思わせられた。最後に「耳なし芳一」の話に触れている。お経を芳一に書いた住職が、霊と交信できる芳一への嫉妬か、わざと耳だけ書かなかった説は考えたことすらなかった。視覚重視、現在と前向き重視の世界で生きている自分。そんな自分にとって、闇や見えないものを、見つめたり想像したりすることは思っている以上に大切かもしれない。2022/10/30
