出版社内容情報
17世紀を生きた哲学者・スピノザの主著『エチカ』。タイトルは日本語で「倫理学」であり、人間が正しく生きる方法を説く内容だが、発行当初は無神論者による冒涜の書として黙殺された。あまりに革新的で、それゆえ難解な思考法とはどのようなものだったのか?気鋭の哲学者が読み解く!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
67
☆5。結構面白く読めた。だが、薄い本の割にえらく読むのに時間がかかってしまった。読むスピードが遅かったのは、ひとえに自分が哲学系の本を読み慣れていないからだろう。ただ、ボーッと読むと分かりづらい(例えば「神」の部分とか、「意志」と「意識」とか)所が頻繁に出てくるので要注意。なお、特に興味深く読めたのは第3回の「自由」の部分。「スピノザは『意志の自由』も『自由意志』も認めません」p84・・・思わず、え? となるが落ち着いて続きを読もう。「意志もまた何らかの原因によって決定されている」p84ふむふむ。2020/05/05
おたま
54
ある方から、スピノザの『エチカ』について、最も分かりやすい解説として紹介していただいた。確かに國分功一郎さんの解説は分かりやすく、しかも『エチカ』の肝となる部分は外していないと思われる。「汎神論」「心身並行論」「コナトゥス」等の基本的な考え方もよく分かるし、納得のできるものだ。スピノザがデカルトとは異なる「もう一つの近代」を準備した思想家だということで、近代的な合理主義(科学主義)が行き詰まりを呈している現代にあって、新しい方向を示してくれている。ここからさらに『エチカ』そのものにチャレンジしてみたい。2020/03/22
ころこ
47
TV番組の読者層に対して、著者が『エチカ』を解説することの困難を一番分かっているはずです。思い切ったのは、『エチカ』を読まない読者に対して解説するスタンスをとっていることです。『エチカ』が断章なので本文はある程度、引用されています。本書は完結して読むことができます。あえて第四部から始まり、解説が重要な概念ごとに展開されています。独特の概念操作が『エチカ』の読み辛さであり魅力です。日常的なたとえがあれば躊躇なくたとえ話を駆使し、哲学用語を使いません。分かり辛さから日常に着地する驚きを我々に提示します。2018/12/07
シッダ@涅槃
46
たかが雑誌と侮るなかれ。何度も読んでスピノザ(と國分)の哲学を体得したくなる。個人的には自由と能動/受動の話が面白かった。ただ、國分功一郎先生の『暇と退屈の倫理学』や『中動態の世界』はまるで理解してなかったことを痛感。國分思想への入り口にもなる本。2019/01/05
禿童子
43
あっさり読めてしまった。さすが『100分で名著』!『中動態の世界』を先に読んでいたので、國分さんの論法に慣れていたせいか。難解をもって鳴るスピノザの『エチカ』ってこんなことを書いてあるのか。イチゲンさんの理解ですが、本質(=神)という一点を除けば、水魚のたとえとか、正法眼蔵に書かれていた仏教の世界観とよく似ているという既視感があります。デカルトの心身二元論に違和感をもつ私にはスピノザは入りやすいかな。「ある真理に到達するためには、主体が変容し、レベルアップしなければならない。」とは、仏教の修行みたい。2019/01/29