出版社内容情報
なぜ外交は破綻したのか?外務省内の組織的対立や官僚たちの動向を軸に、開戦から終戦にいたる通史をたどりなおす。『昭和天皇実録』をふくむ史資料を精緻に読み解き、外務官僚たちの苦闘を伝える一冊。
内容説明
内閣中枢や軍部と比較すると、太平洋戦争における外務官僚たちの動向は、ややもすると等閑視されがちである。だが、一九二〇年代に始まった外務省内の「改革」は、開戦から終戦に至るあらゆる場面に影響を与えることとなった。外務省内において、対米開戦はいかに決定されたのか。数多の終戦工作は、なぜ実を結ばなかったのか。白鳥敏夫、東郷茂徳、松岡洋右、重光葵、佐藤尚武…。外務官僚たちの動向を中心に据えて、数々の史資料を精緻に読み解きながら、太平洋戦争の諸相を捉えなおす。
目次
第1章 外務省の開戦指導
第2章 外務省革新派の形成とその変容
第3章 前史としての経済戦争
第4章 日独伊三国同盟と日ソ中立の虚像
第5章 日米戦争回避の可能性
第6章 戦時下の日独ソ関係と対中政戦略
第7章 戦争終結への苦闘
著者等紹介
佐藤元英[サトウモトエイ]
1949年、秋田県生れ。中央大学文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程満期退学。専門は日本近現代史、日本外交史。現在、中央大学文学部教授。外務省外交史料館編纂官、宮内庁書陵部主任研究官、駒澤大学教授などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
り こ む ん
23
今、まさに開催中のG20のニュースを見ながら、世界の繋がりの緊密さと危うさを感じる。当時の世界より、現在の世界のが広い。それだけ、人々の思惑が深い。でも、当時の外交が簡単だった訳でもない。陸続きでイロイロ駆け引きをしてきた国と違い。日本は世界の海原にこぎでて、ヨチヨチの国を背負い外交をした人々の姿は、緊張の連続だ。ただ、当時の日本を取り巻く状況、国内に漂う雰囲気、見通しの甘さは否めない。どこか幻想的で、日本に有利の淡い期待での外交が目立つ。ただ、当時としては日本の限界だったのだろうとも感じる。2019/06/28
ケニオミ
9
たぶん事実に基づいているのでしょう。しかし、あまりにも淡々と事実を羅列しているため、歴史の「ワクワク感」がないがしろにされているような印象を受けました。経済面でのアメリカの締め付けは以前から把握していましたが、改めて人間と言うものは理性で動くものでないことを思い知らされました。本書は歴史資料としては価値があるとは思いますが、面白くはありません。以上2015/10/22
ぴー
7
日米開戦の直前の日本政府の交渉や、終戦工作が詳しく知れた。後半にソ連を頼っていたのはなぜ?と思いながら本書を読んでいた。外交の難しさを改めて感じた。2023/03/28
月をみるもの
6
日本の近代史における一番の疑問は「アメリカとの戦いに向けた Point of no return がどこにあったのか」である。当然ながら、本来であれば外務省が主役であったはずだが「そもそも外務省は軍部にひきずられるだけでなく、主体的な外交交渉をしてたのか?」というのが普通の人の想いだろう。だから帯の宣伝も「外務省はいかに開戦を指導したのか?」と疑問系で書かれている。欧米派・アジア派・連盟派・革新派と、いろいろな派閥があったってのはわかるけど、それぞれがなにを考えどう行動したのかはいまひとつ判然としない。。2015/09/22
シロクマとーちゃん
5
一般には真珠湾攻撃の直前に宣戦布告をするのが日本側の意図であったが、手続き上の問題により、奇襲後の宣戦になってしまったと思われている。しかし、この本によると、外務省は「宣戦布告なしの開戦」の可能性を当初から検討していた。また、真珠湾攻撃の直後にアメリカに渡されたものは、実のところ、宣戦布告というより極めてあいまいな覚書に過ぎなかった。これ以外にも日本の外交戦術が、常に独特の曖昧さを伴っていたことがわかる。2016/03/31