内容説明
私たちをとりまく環境のさらなる情報化により、働き方や暮らし方など生活が様変わりし、生命科学や工学技術の高度な発展により、身体の可能性が塗り替えられる近未来。そんな未来社会で誰もがよりよく生きることのできるように、どのような社会を目指せばいいのだろうか?その旗印となるのが、「権利」だ。さまざまな「あしたの権利」を構想することで、現代社会に正面から向きあう「社会問題入門」登場!
目次
序 なぜ権利を考えるのか
第1講 縁を切る権利―暴力から身を守る
第2講 病気である権利―工学的希望の先を読む
第3講 快眠権と快便権―人間らしく欲求を満たす
第4講 「家族」をつくる権利―それぞれの形で暮らす
第5講 スポーツ権―万人とともに遊ぶ
第6講 未来をつくる権利―監視技術を使いこなす
著者等紹介
荻上チキ[オギウエチキ]
1981年生まれ。評論家・編集者。「シノドス」編集長。政治・経済から社会・風俗、文化・思想まで、幅広い領域で現代の問題と向き合い、取材・評論活動を展開する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
15
「縁を切る権利」「病気である権利」「快眠権と快便権」など、目次を見ているだけでなんだか面白くなってくる。社会問題を思考訓練的に考えている一冊で、個人的には納得いく部分も多く、勉強にもなった。「どんな家庭に生まれても、どんな境遇に追い込まれても、簡単には人生が詰まない社会=なんとかなる社会」という概念は魅力的で、そのゆるい感じがちょうどいい。いまの社会になにか物申したくなっているひとは手に取ってみるといいと思います。2014/06/18
takeapple
12
社会問題を議論する中で、新しい権利について考え、社会のあり方を見直すことができるようになっている。TBSラジオの「荻上チキのsession22」のメインパーソナリティである著者の問題意識の鋭さが冴える。縁を切る権利、病気である権利、快眠権と快便権、家族をつくる権利、スポーツ権、未来をつくる権利と6つの権利からなっている。より良い社会であるには市民にコントロールされたより良い国家権力が必要で、そのあるべき国家は、多様性に富んだ人権に配慮した、弱者・少数者に優しい民主的な国家なんだろうと思う。でも国家は必要?2019/10/14
NICK
12
歴史的に見ても、我々は一世紀前に比べてよほどマシな社会を生きている。男女平等の参政権をはじめ、様々な権利は当時からすればおよそ考えもつかないものであったろう。とすれば、現状から新たな権利を考えることはまた来たるべき新たな社会を考えることになるだろう。そうしたコンセプトのもとに「快眠権」や「手を抜く権利」など様々な権利が提唱されている。権利や制度というのはどうしても「枠」にならざるを得ない。しかし著者のいう「なんとかなる社会」は枠からあぶれた人にも手を差し伸べようとする善意が感じられ、好感触だった。2014/11/17
onaka
11
新たな権利をつくるなんて大袈裟なことじゃない。身近な話題を起点にこんな権利があったらと考えることが、より良い未来をつくることにつながる。こんな発想はなかった。なるほど。縁を切る権利、病気である権利、快眠権と快便権、「家族」をつくる権利、とかとか。世界をハックする、優しい革命のためのファーストステップだな。好感触!2014/12/08
きなこ
8
session22を聞いていて、著書を読みたくなり手に取った一冊。著者はとても慎重な言葉選びをする。あらゆる方面に目を配り、自分の言葉や思想が誰かを傷つけているかもしれない可能性を常に意識している。ほんの数十年前まで女性に参政権はなかった。今当たり前のように享受している権利が、過去にはそうでなかったように、現在権利として認められていない事柄が、未来には当たり前の権利になる。この本で提案されている新しい権利は、一見空想のように見えるかもしれないけれど、実はとても現実的なことを言っているのではないかと感じた。2017/12/02