内容説明
二十世紀なかば、構造主義は思想界を一変させた。その思考は今なおあらゆる学問分野の底流となっている。構造主義者は、日常生活に潜む権力、他者を排除する仕組み、そして「オリジナル」という観念が幻想であることを暴いてきた。では、現代、構造主義に読み込める最も重要な知見とは何か。それは、他者を巻き込んで成立する自己像を発見したことである。「絆」が称賛される一方で他者への不寛容が強まっている現在、異質な存在を包摂する個人のあり方をこそ学ぶべきなのだ。原典を丁寧に読み解き、来るべき社会の構想に及ぶ“再入門”書。
目次
第1部 主体と作品の解体(作者はなぜ死んでいるのか;言語は何を伝えるか;「構造」とは何か;類似から相似へ;権力はいつ変容したか)
第2部 権力と主体の解剖(代理から代替へ;古代における「主体化」;言語の権力を揺さぶる;悲劇の人格論;「ない」という「ある」こと)
第3部 今こそ読み返す(人を喰う社会と人を吐き出す社会;分人論を先取りし、のりこえる;新世界のレヴィ=ストロース)
著者等紹介
出口顯[デグチアキラ]
1957年、島根県生まれ。筑波大学比較文化学類卒業。東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程修了、同博士課程退学。島根大学法文学部助手、助教授を経て、同大学同学部教授。博士(文学)。専門は文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masabi
18
【要旨】「構造主義者」レヴィ=ストロース、バルト、フーコー、ラカンの思想を読み解く。【感想】個に先立って物事を規定する関係性を構造と定義する。神話や文学、絵画などを題材に二項対立的にみて両者の関係性を分析する、との理解でいいのだろうか。2016/11/07
はとむぎ
13
フーコー、レビィストロース、ラカンなどの考えていたことに対する深い洞察。1970年頃に日本でも構造主義は、ブームになったらしい。 その頃に読まれた方がどんな風に思ったのか知りたい。面白かった。 2024/01/27
(haro-n)
6
読了。「構造」の定義が丁寧に説明され良かった。「神話」を使って構造主義的な捉え方を紹介、興味深い。マグリットの絵画をもとに類似と相似を論じる箇所は、一般的な意味との違いが不明瞭でか難しかった。しかし、代理と代替の違いから権力と主体との関係を論じる箇所は非常に面白かった。バルトの人格論は概要は分かるがどうもピンと来ない。「分人論」では、その問題点の説明が分かり辛かった。「自己の前に他者や世界を」という他者に開かれた思想が構造主義的なのであり、分人論は自己愛がまず最初にあるため、問題を抱えるということか…。2017/05/18
shimojik
4
ランボー:私とは一個の他者だ/シベリアの先住民ユカギール:自己が自己であるためには他者を内在化しなければならない/バルト:意味とはシニフィアンが他の多数のシニフィアンに送り届けられる可能性の存在そのもの、複数性の存在そのもの/理髪店は頭髪の時間のリセット、墓は止まった時間、美術館・図書館は時間のアーカイブ/レヴィストロース:個人の創意が神話になるためには、社会集団に受け入れられる必要がある。神話とは社会集団の知的・道徳的欲求に応えるものだから/2013/12/23
えむa
2
権力と主体を論じるのなかで代理母を分析した章は興味深く、ちょっと前のめりになって読めたが、“構造主義”の入口としては、難しすぎて自分の咀嚼力不足からかすんなり落ちてくるものがほとんど無かった。もっと本を読め!ってことかな。 2014/08/24
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- 和書
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