内容説明
原発事故から出た放射能はいま、どうなっているのか。農作物は本当に危ないのか。不安の連鎖を断ち切るために、土壌と農作物における放射能の動きが調べられてきた。汚染はどのように進んでいるのか?除染はどのように行うべきか?そして、放射性物質は食べ物を通して循環しているのか?事故直後から現在までの農産物調査と実験の結果を冷静に分析して放射性セシウムが土壌に固着していることを明らかにする。実態の正確な記述から、放射能汚染の本質を考える一冊。
目次
第1章 土壌と放射能汚染(土壌とは何か;放射能とは何か ほか)
第2章 汚染の実態(農作物の汚染の仕組み;コメの汚染 ほか)
第3章 放射性物質は循環するか(森林での放射性セシウムの動き;生物系の循環 ほか)
第4章 これからの除染はどうあるべきか(除染の具体的な手段;食品の安全)
著者等紹介
中西友子[ナカニシトモコ]
1978年、東京大学大学院理学系研究科化学専門課程博士課程修了。理学博士。専門は放射線植物生理学。日本ゼオン(株)技術開発研究センター在籍時にカリフォルニア大学ローレンス・バークレイ研究所に留学。01年から東京大学教授。2000年、「植物における水および微量元素の挙動」で第20回猿橋賞受賞。2010年、「放射線ならびにアイソトープを駆使した植物生理学の研究」で日本放射化学会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
20
福島第一原発の事故直後、情報が錯綜し、それが引き起こすヒステリックな感情が、一時的に風評を起こしてしまうのは、いたしかたない部分もあるだろう。しかし、その後も、いや現在に至るまで、フクシマを巡る風評には根強いものがある。それは、私達の無知から来るものだ。その無知は、福島に対する無関心から来ているのではないか。怖い怖いと言いながら、私達はどれだけ福島の状況を知るために情報を収集し、どれだけ理解しようとしただろうか。福島を知らないからこそ、いつまでも恐れるのだ。風評は、私達の無関心から始まっている。(つづく)2013/10/15
Koning
17
農産物の放射性物質による汚染に対して実態と現況、そして作物によって異なる放射性物質の付着あるいは吸収の仕方の違いといった事故後に詳細な調査が行われて分かった事を丁寧に解説。怖がるならちゃんと怖がるべき事に対して怖がろうよ!という意味では基本を固めるのにはいいんじゃないかな?特に何でもかんでも福島も東北も東日本も農産物は全滅とか信じちゃってる人は逆に今福島の農産物一番安全ですぜ?というのは言っておきたい。2013/12/21
更紗蝦
14
放射能汚染の危険性を軽視するバイアスの元に書かれた本です。汚染地で農作物を育てることを前提として研究・調査が進められており、チェルノブイリの知見が全く省みられていないことにゾッとします。玄米の全袋検査に言及している部分では「検出限界値が何ベクレルなのか」も「検出限界値の概念」も説明せずに「九九.八%から(放射能は)まったく検出されていない」と書いてあり(95p)、素人向けの本ということを差し引いても科学関係の本としてはお粗末です。原発事故は収束していないということに触れていないのも問題です。2014/08/05
coolflat
6
公害で見られたような重金属と放射性セシウムでは環境内循環が違うらしい。実際、著者の調査では放射性セシウムは最初に降った所にかなり強く吸着し公害に見られたような循環はしていない、放射性セシウムは土壌に固着しやすいため留まり易く広く流れにくい、逆にアスファルトは留まらず流れ易い、セシウムは土壌へと蓄積されるためその上に育つ植物は今となってはほとんど土壌中からセシウムを吸収しない、放射性セシウムの生物濃縮に関しても起きていない、ということだ。但し、あくまでも放射性セシウムに限ってのことで、他の詳細はこれからだ。2014/02/11
takao
1
興味深い。2018/04/02