内容説明
隋唐帝国の出現により中国は巨大な龍となった。おびえる朝鮮諸国と日本。百済・高句麗が滅び、白村江で敗北した日本の運命は…藤原不比等は新しい王権を夢見る。その王権は草壁・軽・首の三人の皇子に託される。日本書紀の中に隠された不比等の政治哲学。天皇は天孫降臨神話で「神」になり、聖徳太子で「聖」になる。その「神聖」なる天皇を藤原一族が呑み込む。藤原不比等の企み、その呪縛は今もなお続く。
目次
第1部 『日本書紀』の構想(“聖徳太子”の誕生;『日本書紀』の虚構;実在した蘇我王朝;王権の諸問題)
第2部 天孫降臨の夢(“天皇制”成立への道;藤原不比等のプロジェクト;天孫降臨神話の成立)
天皇制をめぐって
著者等紹介
大山誠一[オオヤマセイイチ]
1944年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。現在、中部大学人文学部教授。専攻は日本古代政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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イノ
20
聖徳太子は存在しなかった。 それを日本書紀や数々の文献から証明していくが、前提の知識が 多く必要で難しかった。 それでも江戸時代でも否定説があったとか、ウチもウチもで家系図が広まっていった話は面白かった。 しかし万世一系のシステムを呪縛というあたり 相容れない。 ネットで調べると存在してた説も出てきて著者の反論もあって 何とも言えない。2016/09/29
keith
14
聖徳太子は存在しなかった。藤原不比等に歴史を捏造され1300年間騙され続けている。そんな説を唱える著者。この時代はとても面白い。不比等、すごい男です。けど、最近、不比等は橘三千代の意のままに操られているだけで、本当は三千代が希代の人物なのではと密かに思ってます。2020/06/05
鐵太郎
14
聖徳太子は存在しなかった、という説はどれだけ説得力があるのでしょうか。この本はこの説の証明から始まり、藤原不比等という日本史上の怪物・傑物の正体を推定して大王(すめらみこと)の家、天皇家がどのように形成されたのかを説いています。プロジェクトX、プロジェクトY、プロジェクトZという書き方で、不比等の壮大な計画を説明する説き方も楽しめました。皇国史観とマルクス主義と最近の制度史研究が一つ穴のムジナ、という最後のシメも。こういう歴史解説も面白い。2016/01/19
月をみるもの
13
騎馬民族征服王朝説のようなものかと思ってたんだけど、そうでもないみたい>聖徳太子虚構説。政府が統計や記録を改ざんしていることが次々と明らかになっているが、そもそも日本の官僚制と法制度(律令体制)が歴史の偽造(日本書記の編集)とともに始まってるのだから仕方ないのか、、、と思えてきた。 いまの内閣制度は、不比等がつくって明治に再生された太政官の後継だしな。。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E6%94%BF%E5%AE%982019/01/13
Yoshihiro Yamamoto
8
A+ 古代史に興味があることを割引いても最高に面白い。退職後のライフワークに聖徳太子の謎を研究したいと思っていたが、それも含めて古代史の謎と流れが納得できた。かつての梅原猛の「隠された十字架(法隆寺は聖徳太子の怨霊鎮魂説)」から、最近では関裕二の蘇我氏抹殺説など、この辺りは興味が尽きないが、さすがに歴史学者である著者はきちんと文献に当たってそこから筋道立てて「聖徳太子不在説」を展開する。こちらも年表を確認しつつ、地名はグーグルマップで調べながら、丁寧に読んだ。年末年始休みの最大の収穫!飛鳥・奈良へは必携。2016/01/04