内容説明
なぜ「寿命」という決められた死が存在するのか。じつは寿命は原初の生命には存在せず、有性生殖の誕生と共に生まれたものである。遺伝子の働きからタンパク質の生滅、細胞器官の挙動までゆらぎを孕む生命システムのメカニズムを明らかにし、ゾウリムシからヒトまでの寿命の法則を吟味することで、生物の多様な生と死の姿を描き出す。原核細胞から真核細胞へという進化のドラマを追い「死」を取り込んだ生命の進化戦略に迫る渾身の生命論。
目次
第1章 寿命にはさまざまな形がある(動物の寿命・植物の寿命;個体の寿命・細胞の寿命 ほか)
第2章 寿命と遺伝子の関係を探る(生命表と生存曲線;遺伝子で寿命はどう変わる ほか)
第3章 「寿命の法則」を考える(有性生殖はなぜ寿命の始点となるか;時間・体重・エネルギー消費量 ほか)
第4章 寿命の進化をたどる(細胞進化の方向性;原核細胞から真核細胞へ ほか)
終章 寿命から「生命」を考える(寿命とは何か;寿命とは抑制系の進化である)
著者等紹介
高木由臣[タカギヨシオミ]
1941年、徳島県生まれ。静岡大学卒業。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。同博士課程中退。奈良女子大学名誉教授。理学博士。専攻は発生遺伝学、細胞生物学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
1
寿命の定義:受精から死に至るまでの個体の継続期間。種子の期間を含む。 2021/07/13
はるくる
1
ちょっと内容が専門的すぎたかなー今まで出した論文を噛み砕いてくれてはいるけど…寿命に関するこういう研究分野もあるんだ、まだこんな問題については明らかにされていないんだ、ということを概観した感じ2018/01/21
ミニジロー
1
生き物の寿命を色んな切り口で分析してあり、とても面白く知的興味をそそる。「生物の本来の特徴は暴走系」であり、「寿命とは抑制系の進化」という論に、生物学を超えて考えさせられるものがある。2016/04/30
静
1
原核細胞には寿命がない。進化することで生物は寿命を獲得したとも言える。抑制することの大切さ。クローンや万能幹細胞技術について考えるとき、寿命や体細胞の分化のような不可逆な抑制が、ヒトを含めた真核生物に進化してきたことの意義も忘れずに考えたい。2012/07/23
メルセ・ひすい
1
なぜ私たちには寿命があるのか。生物をめぐるこの大きなテーマに細胞学の視点から迫る。じつは生命の原初には寿命が存在しなかった。生命は、進化の過程で死を獲得したのだ。ヒトからゾウリムシまで、細胞の能力と働きを追い、「寿命の法則」のメカニズムを解きながら、“生まれ、死ぬ”生命システムの謎に迫る。 2009/04/24