出版社内容情報
その画家はなぜ、強烈に「知」を求めたのか──?
近代の夜明け前、フンボルトやリンネ、ダーウィンよりはるか昔に、昆虫学という学問が存在しないなか独学で研究を行い、メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現、さらに大西洋を渡って南米を調査旅行し、昆虫や植物の姿を生き生きと描写した破格の女性が17 世紀にいた。小さな虫の中に「神」を見たその女性、マリア・シビラ・メーリアンとは何者だったのか──。科学と芸術が混じり合った豊かな時代の輝かしい偉業を、中野京子が生き生きと蘇らせる。2002 年刊の幻の名著、『情熱の女流「昆虫画家」──メーリアン波乱万丈の生涯』が満を持して復刊!
第一章 フランクフルト時代(~18歳)──小さき虫に神が宿る
第二章 ニュルンベルク時代(~38歳)──科学と芸術の幸福な融合
第三章 オランダ時代(~51歳)──繭の中で変化は起こる
第四章 スリナム時代(~54歳)──悦びの出帆
第五章 アムステルダムでの晩年(~69歳)──不屈の魂は何度も蘇る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
66
中野京子の新刊と思って読んだら、2002年に刊行された本の復刊だった。この本が出版された頃は、まだ中野京子も知られていなかったのだろう。その後、「怖い絵」のヒットにより、知られるようになり、この本も復刊出来たのではないか。17世紀に生きた昆虫画家の生涯。この女性のことは、この本で初めて知った。見たい、知りたいという欲求から、こんなにも魅力的な作品を生み出していたとは。復刊され、この本に触れることが出来てほんとによかった。2025/07/04
あたびー
41
この女性の存在を全く知らなかったばかりか、生きた時代がバロック(17〜18世紀)と知って驚愕した。女性の生き方が型にはめられていた時代に、画家で印刷業の家に生まれたとは言え、自分の興味のある虫の世界に浸りきり一生をその観察と絵画化に費やした偉大な女性の生涯を綴った本である。幼虫と成虫は別の生物だと誤解されていた時代に、虫を観察し、幼虫が蛹になり成虫になる過程を明らかにしたのが女性であるということに感動した。さらに南米スリナムのジャングルでの活動までとは恐れ入る。昆虫学の魁としてもっと評価されるべきと思う。2025/06/17
読特
40
葉を食べる芋虫が、蛹となり、蝶や蛾になり飛び立つ。メタモルフォーゼ。本能の赴くままに動いて、時が来て、変態する。偶然おかれた環境で、生き物がそれぞれ行動し、自然界を成り立たせている。…フランクフルトの版画工の後妻の子として生まれる。父の死後、実家を追い出され、母の再婚相手の元で暮らす。孤独な少女が出会ったミクロな世界。虫さえ追っていれば幸せだった。成長し結婚する。出産し離婚する。その後、スリナムを目指す。娘とのフィールドワーク。歴史に残る「虫の本」の出版。バロック期の女性。それぞれの中の1人として生きた。2025/05/07
星落秋風五丈原
31
古くは『堤中納言物語』内の10話ある短編の一つとして、「虫めづる姫君」が紹介。化粧をすればそこそこなのに、、身なりに構わず昆虫に夢中である。ちょっかいをかけようとした若君は退散するが、西洋の虫めづる女性は結婚し、子供も産み、昆虫の絵を書くことを職業にさえした。しかしやはり、女性ならではの差別や理不尽とは無縁ではなかった。その女性とは、マリア・ジビーラ・メーリアン。メ―リアンは実家の姓だ。実家は銅版画で有名なメ―リアン一族で父は版画工であり「メーリアン出版社」の経営者スイス人マテウス・メーリアン。2025/04/29
じーにあす
28
時は17世紀。まだ誰しもが興味を抱かなかった虫を描き観察し続けた一人の女性がいた。その名はマリア・シビラ・メーリアン。植物画家であり昆虫学者であった彼女。魔女裁判とペストの時代に何故彼女は虫を描き続けたのか。何故危険を冒してまでオランダから南米へ船で渡ったのか。そこには想像を絶する波乱万丈の人生が!とまでは言っていないのだけどそのドラマティックな彼女の生涯が綴られている。この時代の女性が認められたのはやはり自然や虫を知りたいという情熱だったのだろう。その探究心は凄いの一言。描かれた絵は写実的で実にリアル。2025/06/24
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- 和書
- はずれ姫