内容説明
般若経、法華経、華厳経、浄土教、密教…。「自己鍛錬」を目的にした釈迦の仏教は、いつ、どこで、なぜ、どのようにして、「衆生救済」を目的とする大乗仏教へと変わったか?そして、その教えはどこへ向かおうとしているのか?原始仏教の研究者と一人の青年との「対話」から大乗仏教の本質へと迫りゆく、驚きの仏教概説書。
目次
第1講 「釈迦の仏教」から大乗仏教へ
第2講 般若経―世界は「空」である
第3講 法華経―なぜ「諸経の王」なのか
第4講 浄土教―阿弥陀と極楽の誕生
第5講 華厳経・密教―宇宙を具現するブッダ
第6講 大乗涅槃経・禅―私の中に仏がいる
第7講 大乗仏教のゆくえ
補講 今も揺れる大乗仏教の世界―『大乗起信論』をめぐって
著者等紹介
佐々木閑[ササキシズカ]
1956年、福井県生まれ。花園大学文学部仏教学科教授。文学博士。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。同大学院文学研究科博士課程満期退学。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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樋口佳之
60
親鸞の浄土真宗になると他力の度合いが強まっていき、「わざわざ願わずとも、阿弥陀様のほうから手を差し伸べて浄土に呼び寄せてくれるのだから、私たちは何もする必要はない」と考えるようになっていきました。そうなると念仏をとなえる意味も変化します。「すでに私たちは極楽に行くことが約束されているのだから、念仏は願うためではなく感謝のためにとなえるのだ」と親鸞は説いています。/絶対他力とは救済への約束なのか。門徒集団の持ったエネルギーはここから産まれたという理解で良いのかな2022/02/20
禿童子
38
対話形式にしたお陰で「100分で名著」のときよりも深い議論についていける。末尾の『大乗起信論』の実体が解明された話は相当な波紋を広げるだろうと想像される。科学的知見とすり合わせてなお信仰心が残るかが問題。「こころ教」で人は救われるのか?いや、そもそも宗教の存在理由は、人の救済が第一義なのか。いろんな意味で本書はパンドラの箱を開いたような気もする。2023/07/05
trazom
37
修業を通じて煩悩を消すことを目指すはずの「釈迦の仏教」が、どうして如来蔵思想のようなものに変容していったかが見事に解き明かされる。更に、般若経、法華経、浄土教、華厳経、涅槃経、禅などの大乗の教えが概説され、それぞれが生まれた思想的背景が明らかにされる。華厳経はフラクタル、浄土教はパラレル・ワールド、「大乗起信論」はフェルマーの最終定理などという比喩は、工学部出身の仏教学者である佐々木先生らしい新鮮な視点で面白い。本来の教えから大きく逸脱した「大乗仏教」を許容することこそ、仏教の多様性の象徴なのかもしれない2019/02/21
サアベドラ
25
般若経や法華経といった主要な経典の紹介を通じて、大乗仏教が原始仏教や上座部仏教とどう異なり、どのように変容していったかを解説した新書。著者は初期仏教から大乗仏教まで幅広い著作がある仏教学者。2019年刊。大乗仏教は良くも悪くも何でもありの宗教で、時代が下るにつれて救済の対象がどんどん拡大していく一方、釈迦の時代とは根本的な教義も含めて変質していったとする。一応著者の実家はお寺らしいが、あくまでアカデミックの立場で書かれているため、一部の記述は特定の宗派の熱心な信者には受け入れられないかもしれない。2019/03/10
西
22
仏教の各宗派の違いなどが分かりやすく、頭の中の整理に役立った。仏教を生き方のヒントとして、自らの人生に役立てたいと思う2019/03/27