内容説明
十九世紀後半のフランスに起こった絵画運動で、現代日本でも絶大な人気を誇る「印象派」。“光”を駆使した斬新な描法が映し出したのは、未だ克服せざる「貧富差」による“闇”であった。マネ、モネ、ドガからゴッホまで、美術の革命家たちが描いた“近代”とは―。
目次
第1章 新たな絵画の誕生
第2章 「自然」というアトリエ
第3章 エミール・ゾラをめぐる群像
第4章 キャンバスに映されたパリ
第5章 都市が抱えた闇
第6章 ブルジョワの生きかた
第7章 性と孤独のあわい
第8章 印象派を見る眼
著者等紹介
中野京子[ナカノキョウコ]
北海道生まれ。早稲田大学講師。専門はドイツ文学、西洋文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハイランド
116
印象派の生まれた社会や時代背景から、画家達が何を描こうとしていたのか、どんな影響を社会から受けた、あるいは社会に与えたのかを論ずる。「怖い絵」シリーズの著者で、専門は西洋文化史という氏の、まさに自家薬籠中のテーマ。チューブ入りの絵の具を持ち、カンバスを戸外に持ち出し、光や空気、自分が自然から受けた印象そのままを描こうとした新しい画家達が、当時の貧困や差別などの社会問題に無関心で、後輩の画家の表現に不寛容だったというのは意外だったが、サロンの頑迷さはそれを上回った。美術より当時の社会情勢を知るのに役立つ本。2018/05/25
星落秋風五丈原
70
ここに登場する画家たちは『印象派のミューズ:ルロル姉妹と芸術家たちの光と影』にほぼ登場していますので重ねて読むと印象派の人達の交流関係がよくわかります。見開きで絵を紹介していてわかりやすいです。また印象派が流行した時代―近代についてもよくわかる解説書。ここで取り上げられた本は中野氏の別の著書によっても紹介されているので繰り返し接するうちに絵画に親しむようになっていく仕組み。2015/09/30
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
65
最初酷く蔑まれた印象派が台頭してくる背景を人々の生活や社会の「近代化」と絡めながら説明してくれます。絵画を観る時の一つのバックボーンになりさらに美術館に行く楽しみが増します。まずは印象派以前の画壇はというとアトリビュートを使う宗教画の世界だったのです。その絵を見るためには素養として古典、神話、歴史の知識が必要という堅苦しいものでした。絵画に自由を与えたのが印象派です。2019/06/23
まつこ
62
印象派の絵はパッと見の光の表現加減が好きになったのですが、描いた人物や描かれた時代を知ると更に面白いです。特に画家の貧富や人間相関図を知ると見方も変わってきます。本の最後に年表や画家、その他関係者についてまとまっているので良かったです。メインとなる絵画も見開きカラーで掲載されています。そこでキーとなる数カ所にコメントがあり、絵のどこを見れば良いかが分かりました。中野京子さんは中世のイメージがあったのですが、アカデミーの堅物による批判、印象派と日米の関係などについても素人の私が読んでもわかりやすかったです。2014/10/21
トムトム
54
ヨーロッパの歴史の中に、ちょいちょい日本礼賛が入るところが好きです。欧米では貧しいという事は、卑しく劣等感を持つ事。日本では「清貧」という言葉もあるぐらい、貧しくても心は清く!ヨーロッパの王族の未練がましさと、徳川慶喜さんの潔さ!そんな対比が面白かったです。2020/10/10