内容説明
農地の10%に及ぶ耕作放棄地、蔓延する無計画な転用…農地の荒廃が進む中、台帳の不備で実態把握すらままならない。昨今の農業ブームに隠れて、これまでマスコミが触れてこなかった農地行政の真相を明かすとともに、歴史的な視点や市場効率の考察を踏まえ、崩壊前夜の日本農業を救うための方途をも示す。
目次
第1章 消えていく農地―農業ブームの陰で起きていること(いつわりの農業ブーム;農業版「消えた年金」問題;農地の無秩序化;よくある誤認)
第2章 なぜ農地は無秩序化したのか―日本農業の足取り(明治大正期―「手作り地主」による秩序維持;両大戦間期―重工業化と農村の変質;高度経済成長期―JAの発展;高度経済成長の終焉―旧システムの延命;バブル崩壊後―進行する無秩序化)
第3章 競争メカニズムの欠如―農地と農業効率の関係性(農地荒廃がもたらす害悪;競争なき農地市場;日本の農地の特徴;不健全な農業保護)
第4章 政権交代と日本農政―小泉政権以降の模索と迷走(小泉・安倍政権下での農政改革;自民党の方針転換;政権交代後の危うい農政;破滅のシナリオ)
第5章 日本農業の理想像―市民参加型の土地利用へ(「平成検地」の実行;「人から土地へ」の大転換;転用権の入札構造;農地税制の改革;離農プログラム;アジアとの共存共栄)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yearning for peace
4
4年前に読んだ『日本の食と農』を読んだ衝撃は今も残っている。久々に刊行された神門氏の本書を読んでいると、農地転用の問題は改善されるどころか、むしろエスカレートしており、病巣は悪化の一途をたどっているようだ。マスコミがほとんど取り上げていないこの事実は、どういうことなのだろうか。時間はかかるものの、今ここで体制を立て直さないと、第1次から第3次までの産業が世界に取り残されていくような気がしている。産官民による劇的な転換を渇望する。2010/06/15
サカモトマコト(きょろちゃん)
2
日本農業の問題点を指摘している本。 農地の転用がいかに問題なのかがよくわかりました。2017/05/04
algae
2
日本の農業の問題は農業就業者の高齢化だー、なんてよく聞くけど、それは何十年も前から言われていたことだし、むしろ農地転用や法令面といった本質的な問題から目を逸らすためのスケープゴートというふうに感じられる。それに、半世紀以上も前に作られた「コシヒカリ」がいまだありがたがられているのもおかしな話だ。保護政策により、健全な市場原理が働きにくいせいか、品種改良や技術革新へのインセンティブが働きにくい構造になっているといわれるのも納得できる。今後の貿易自由化の流れで、日本の農業が世界に立ち向かえるか気になるところ。2016/09/17
Ayumu Kobayashi
2
この本はまず明治から平成の鳩山政権までの農政を俯瞰しつつ、日本の農業、特に農地利用がどのような理由で無秩序化し、競争力を無くしていったかを冷静に分析し、提示して見せてくれる。単純に農政の歴史の勉強としても役立つし、それ以上にその農政によって人の意識がどのように変わり、どのような行動・結果につながっていったかという因果関係をはっきり説明してくれるので非常に腑に落ちやすい。 http://ayumnote.blogspot.com/2011/02/blog-post.html2011/02/20
にゃ
2
昨今の為替戦争により近い将来、通貨は暴落=資本主義は崩壊する。その時にモノを言うのは実物だ。特に食べ物を生産する農業はこれから強い。そうだ、就農しよう。そんな風に思っている人が最近多いのではないでしょうか。と言うか、私がそうです。そんな営農に安易に希望を持っている人はこの本を読みなさいと勧められて、手に取りました。現在の絶望的な日本農業の実態を冷静に分析・報告されていて心が痛くなるほど勉強になりました。解決策もちゃんと提示されています。ただ、政策提言に近いので個人で実行するのに難ありですが。。2012/01/17
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- 和書
- 防災六法 〈平成8年版〉