内容説明
国内で一〇〇万人と呼ばれる「ひきこもり」は、アメリカ、ヨーロッパ諸国では見られない日本的な病である。人間関係の基本である親子の絆の喪失、いじめ、友人の裏切りで人間不信に陥った若者たち。その背後には、本音と建前が錯綜し、個人の感情を否定する「和の文化」があった。日本政府ひきこもり説、星一徹と星飛雄馬にみる親子関係…ひきこもり=「甘え」論に真っ向から対立する結論に注目。
目次
第1章 ひきこもりとは
第2章 アタッチメント・トラウマ
第3章 ひきこもりの治療
第4章 飽食の時代
第5章 共依存社会とひきこもり
第6章 今後の課題
著者等紹介
服部雄一[ハットリユウイチ]
1949年、福岡県生まれ。狭山心理研究所主宰、セラピスト。元東京理科大学非常勤講師。ロサンゼルスでの語学留学、八年間の通訳業を経てカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校で六年間学び、心理学修士課程修了。国内の数少ない多重人格専門家。トラウマ性の心理障害の治療が専門。セラピストとして患者さんと向き合うほか、ひきこもりについては、初めて英字論文で症例を発表
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
12
トラウマ性心理障害の専門家が<ひきこもり=「甘え」論>に反駁。<部屋にひきこもるという行為は症状の一部に過ぎません。彼らには、対人恐怖、感情マヒ、不眠、自殺願望、心因性の身体症状など多彩な症状があります。そこに着目しながら、さらに彼らの声に耳を傾けると、彼らは人間を信用していないことが分かります。/ひきこもりは「人間関係のトラウマ」(親との絆の喪失、いじめ、友人の裏切り)を抱えている>ので、<ひきこもりをPTSDの観点から>記述した書。<世間体、建て前、横並び社会が子どもたちをゆっくり「病気」にする>。⇒2020/04/27
まいこ
6
著者の「仮面ひきこもり」がとても興味深かったので遡って読んだ。ひきこもりのおぼえる世間との違和感や、仮面を使い分けることによる人間関係の疲れについて「人間失格」から多く引用される。葉蔵は人間関係に絶望して死を選んだ、と。著者はひきこもりを、再生産できない病気だとも言う。男性は恋愛(結婚)できないし、女性は健全な育児ができないと。親との愛着形成に失敗したトラウマが根底にあり、海外でひきこもりの症例を紹介すると、対人恐怖や人間不信や身体症状から「トラウマに関係する解離症状」として解釈されるという。2015/04/16
Pery
3
引きこもりは、親子関係、いじめ、抑圧的な教育により、対人恐怖が原因であり、怠けではなく、精神的な治療を必要とする病いであるとする説。一見普通の家庭においても、父親、母親、子供がそれぞれの役割を演じているだけで、内面的な交流のない、上辺だけの家庭が多い。そういう家庭では、子供は本心を隠し、表面的に取り繕う。その苦しみを、吐露しているのが太宰治の「人間失格」。引きこもりの原因としては、内田樹さんの説より、こちらの方が正論であると思う。2015/06/10
kana
3
ひきこもりの根本的な問題に焦点を当ててくれているのが嬉しかった。ただ外に出られるようになれば脱ひきこもりになれるけど、問題はそこじゃない。社会に出て、相手を心から信頼して人間関係を築いていけるか? 他の家庭の異性という社会と関わって、新しい自分の家庭を作っていけるか? ひきこもりが恋愛が怖い、結婚はきっとムリ…と言う気持ちは私にはよく分かる。2014/06/04
yummy
1
日本人の悪いところの指摘もだけど、一応社会人生活をしているけれど、私の根本として人間自体を好きになれないところとか、そのように至る家庭環境だとか、心当たりがありすぎて、私もひきこもり予備軍なのかもと思わされてつらい。糧にしたい。2018/09/08
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- 和書
- 種をあつめる少年