内容説明
なぜ人口七八〇〇の小さな町で、人々はサッカーに夢を追ったのか。昨年、Jスピード昇格と「温泉で働く選手」で話題を集めたザスパ草津だが、その裏には、熱に冒されたように走り、悩み、愛情を深めた選手や町の人々の姿があった。JFL時代から取材を重ねてきた著者が、昇格までの軌跡を辿りつつ、再び盛り上がり始めたJリーグの「あるべき姿」を問う。
目次
第1部 ザスパ草津の軌跡(奇跡のクラブ―ザスパ草津;サッカー界の仕組み;JFL前夜;JFL開幕;難産のJリーグ昇格)
第2部 ザスパを支えた町―草津町(温泉と高原、文化とスポーツの町;ザスパ草津の前身―リエゾン草津;リエゾン草津改革計画 ほか)
第3部 Jを目指すこと、Jが目指すもの(Jリーグを目指す動き;ザスパ草津の戦略とクラブ運営;Jリーグと「地域密着」;草津の抱える特殊な「地域密着」事情;Jリーグでなければいけないのか)
ちょっと長めのエピローグ 友近聡朗の“百年構想”―愛媛FC
著者等紹介
辻谷秋人[ツジヤアキヒト]
スポーツ・ジャーナリスト。1961年群馬県生まれ。競馬専門誌『優駿』等の雑誌編集者を経て独立。小学校二年時まで草津町に在住していたこともあり、ザスパ草津のJFL昇格が決定した2003年暮れからほぼ全ての試合を観戦、チーム関係者やサポーターなどへの綿密な取材を継続している
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感想・レビュー
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ふろんた2.0
8
2005年の本なんで、そんなこともあったなと思い出しながら読んだ。人口1万人にも満たない町でのチームを起こし、Jで戦えるチームを作ったのはすごいこと。どんな規模のチームでも3年で昇格するという目標を立てるのは。それが理にかなっているのがわかった。当時Jを目指していたチームでも上がってきたチームもあれば、消えてしまったチームもある。その地域に合ったやり方ってのがあるんだなあ。また、本書を読むまで知らなかったが、サポーターの移籍って結構あるのね。2013/07/03
コサトン@自反尽己
4
メディアであまり取り上げてなかった部分の紆余曲折や、草津町民の本音などは、知らないことも多く、なかなか興味深く読めた。 前身のリエゾン草津の話や飯島氏の夢なども、いろいろ考えさせられるものあり。 草津ゆえにそうせざるを得ない運営形態。草津だからこそ出来たメディア戦略。その両者の狭間でザスパは一気にJに参入し、今を迎える。「草津」にザスパがどこまでこだわるかにより、クラブの運命は如何様にも変化するのだろうなと、改めて感じた次第。 巻末の愛媛FCの話も含め、Jサポには一読の価値ありかと。【図】2010/03/24
さんつきくん
3
2013年度シーズンから「ザスパクサツ群馬」になった「ザスパ草津」のお話し。町のキャパの問題を提起した時に「いずれザスパ群馬になるかもしれない」と言い当てた著者。時間の問題だったらしい。観光が主要産業の小さな町に「J」を目指すサッカークラブが誕生した。Jリーグ昇格を果たすまでを描いたノンフィクション作品。いずれ前橋市に拠点を移すが、「ザスパ」が草津町にもたらしたものとは。「リエゾン草津」の失敗から歩む始めた残された選手達の努力。最終章の愛媛FCさんの友近聡郎さんの話しも興味深い。そしてサポーターの話しは共2013/02/05
mym
3
Jリーグを目指すなら時間をかけて地域と馴染み、実力を醸成したほうがよいと思われがちだがそれは違う。弱小チームでずっと後にしかJに昇格できない見通しではいい選手は集まらないし、時間をかけている間に経営の体力は落ちる。3年という短期で昇格するという目標を立てることは無謀でも何でもなく合理的な設定なのだ。この部分が最大の気付き。ロアッソも3年でJに上がるという目標は無鉄砲だと思っていたが、そういう事情があってのことだったのかと。実際にJ2に上がることができたが、単なる好運ではないのだと納得。2010/07/26
いしころ
2
ザスパはいかにしてJリーグプロクラブへと成りえたかを追った一冊。県リーグを戦う当時からリアルサカつく・ユニクロユニで注目されていましたがこの作品の肝はザスパ以前のリエゾンを生きた選手たち。2018年現在J3を戦うJ加盟十数年のプロクラブは大人の都合で居場所を取り上げられ、それでも夢を諦めず、その姿勢に感銘を受けた大人たちに支えられてきたどこにでもあるサッカーチームが始まりだったという事実をどうか確認してみてください。2018/05/31