内容説明
「私自身を知りたい」紀元前五世紀のヘラクレイトスの言葉は極めて今日的である。タレス、ピタゴラス、パルメニデス、プロタゴラス…、ソクラテス以前の思想家たちは様々に「世界」や「人間」を探究していたが、そこには今日へと繋がる共通の思考態度=論理の誕生があった。彼らの残した言葉を読むことにより「哲学の始まり」の時期に立会い、「哲学とは何か」をその原風景から問いなおす書。
目次
序章 哲学の始まりとしての古代ギリシア
第1章 「万物の原理」を求めて―タレスとミレトス派
第2章 「宇宙の調和」と数の神秘―ピタゴラス派
第3章 オリンポスの神々を越えて―神話の論理と倫理
第4章 「万物は流転する」―ヘラクレイトスの謎の箴言
第5章 存在と論理―パルメニデスとエレア派の道
第6章 自然像の再構築をめざして―多元論と原子論
第7章 人間への眼差し―ソフィストと相対主義
終章 「ソクラテス以前の思想家」とギリシア哲学の「合理性」
補論―古代ギリシア哲学を学ぶために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あんさん
11
タレスから語られる西洋の哲学の始まり。神々を世界を自然を自分自身を論理的に探究する姿勢。そしてそれが数学的、幾何学的、かつ音楽的にとだんだんと緻密になっていく。本書で扱われるのはソクラテス以前までだが、やがて現代科学へと繋がって行く西洋的な思考の萌芽がよく分かった。ソクラテス以後は続編へ。「しかし、「神」という言葉を聞いて分かる、そもそも、「神は存在しない」という言葉を発する以上、少なくともその意味では、それは何らかの意味で、すでにあるといえるのではないだろうか」2024/12/22
うえ
6
「価値や道徳に関する相対主義もある。伝統的に正しいとされてきた社会的な道徳や規範が実は、ある特定の文化や歴史の中だけでしか妥当しない単なる相対的なものにしかすぎない、それ自体の中に根拠を持たないものにすぎないのではないか…これは、諸国を遍歴している国際的な知識人であるソフィストには親しい考え方であろう…道徳観が相対化されるとき新しい見方は新鮮で、特に若い世代を惹きつける面を持っている。他方では、そうした人たちを伝統を破壊する危険思想の持ち主だとして警戒する向きもあるだろう」2015/06/22
なつき
2
『哲学の原風景 古代ギリシアの知恵とことば』読了。姉妹編の『哲学の饗宴』で哲学入門の講義を受けた経験があるのだが、こちらは未読だったので復習も兼ねてざらりと。タイトルからも容易にわかるように、いわゆるフォアゾクラティカーの概説なのだが、かなり科学的な分析をしているなあとの印象。2017/03/22
はるたろうQQ
1
読めるのだが漠然とする読後感。ギリシア哲学の鍵概念であるロゴスの理解が難しい。感覚・経験する現象の奥にありその現象の原因を説明するものなのだが、日常的な言葉使いでは補足できない。だからと言って諦めずに言葉を鍛え直して突き詰める。ここに哲学の原風景がある?またこのロゴスよって解明すべき自然や世界は物質的、静止的なものではなく、エネルギーに満ちた生命的なものだという。全く内容に関係ないが、「街の書店を覆う暇潰し専用の軽薄短小娯楽本の洪水」とある。そんな本すら読まれずに街の書店が潰れる今とは違い、時代を感じた。2025/02/24
Timothy
0
ソクラテス以前のギリシア哲学者について、平易な文章で説明されていて興味深く読めた。終章で紹介されているギリシア哲学の「論理性」を成立させた三要素が、ことごとく現在の日本とは正反対なのが面白かった。そんな国民性を気に入っているような、残念なような……。押さえるべきポイントを掴み切れたかというと、やはり全くの実力不足なのを痛感する。2015/05/20