内容説明
夏の暑さも、詩人にとっては恰好の題材となる。桃と李が散りはてたあと、ひと雨ごとに緑は深まり、梅の実が黄色く熟せば、猛暑の候。身じろぎさえ億却な午後は、緑の木陰や薔薇棚の傍らに読書で過ごす。夜になってもおさまらない熱気にたまりかね戸をあければ、涼風にのってほのかに香る蓮の花。やがて、暗がりに虫の音を聞くようになれば、季節はいよいよ秋となる。夏熱の中にさまざまな涼味を求めた名詩100首。
目次
夏至
夏日山中
梅雨麦秋
小暑
大暑
避暑納涼
夏花灼灼
立秋
処暑
白露
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しずかな午後
10
春夏秋冬ある石川忠久の「漢詩を読む」シリーズ。明るく爽やかな初夏、じっとり茹だるような盛夏、徐々に物寂しくなる晩夏、夏にもグラデーションがある。中国日本の本当にいろんな時代の作品が鑑賞されているのがありがたい。中唐の柳宗元「夏昼偶作」の「南州の溽暑 酔うて酒の如し」や南宋の楊万里「五月初二日苦熱」の「日光 水を煮て復た湯と成る」などいかにも暑そう。一方で清の袁枚「銷夏詩」は「水雲深き処 花を抱いて眠る 平静自ら思う無官の楽しみ 第一人に驕る六月の天」と、人々が暑さに苦しむ中ゆったりと涼しく過ごしていた2024/08/15
ゆうきなかもと
9
暑い夏はこれに限る!清涼感マックス。特に今年の夏は花火大会などもなく、寂しい夏となったが、文学の中には夏らしき夏がある。オレは、本書で夏を、しっかり堪能させていただいた。今までちょこちょこつまみ食いするように読んでいたが、今回初めて通読した。通読した方が、世界観に浸れると思ったね。2020/09/10