出版社内容情報
「愛のあり方」が腑に落ちれば、キリスト教が理解できる。
世界中の誰もが人生で直面する「愛とは何か」という問い。愛はどのように捉えられてきたのか。受け継がれてきた愛の英知をコンパクトに整理し、キリスト教の基礎知識と合わせて提示する。難解な内容を誰よりも明快に解説できる東大教授による、愛を理解し実践するための書。
内容説明
「愛のあり方」が腑に落ちれば、キリスト教が理解できる。「愛」はどのように捉えられてきたのか。私たちはそれを、どう生かせるのか?明快な解説で注目を浴びる東大教授による、「愛とは何か」を学ぶための入門書。
目次
第1章 古代哲学と愛1―プラトンの「エロース」
第2章 古代哲学と愛2―アリストテレスの友愛
第3章 聖書と愛1―旧約聖書
第4章 聖書と愛2―新約聖書
第5章 アガペーとエロースとの対比
著者等紹介
山本芳久[ヤマモトヨシヒサ]
1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。千葉大学文学部准教授、アメリカ・カトリック大学客員研究員などを経て、現職。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学。著書に『トマス・アクィナス 理性と神秘』(岩波新書、サントリー学芸賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
15
アウグスティヌスの考えは古代の幸福論と繋がっており、彼は幸福を神との関係に求めた。これは神への愛を利己的な動機から説明しているとも取れる。この点をニーグレンは、アウグスティヌスがキリスト教的なアガペー(無償の愛)をエロース(欲望の愛)によって損なってしまったと批判する。それに対して著者が指摘するのは、アウグスティヌスにしてもトマスにしても、自分が神から愛されているという気付きを根底に置いているということである。自分の存在が神によって肯定されているからこそ自分を愛せるのであり、他人も愛せるのだという。2022/12/22
Michio Arai
7
今年2月に読了した本を再読。これは2021年にNHK第二放送のカルチャーラジオで放送されていたものの書籍化です。当時は何気なくらじるらじるという見逃し配信で見つけて夢中で聴いていました。プラトンの「エロース」とアリストテレスの「友愛(フィリア)」といった古代ギリシャ哲学の愛がアウグスティヌスの「カリタス」に融合し、イスラム世界を経由しトマス・アクィナスの元で再解釈され精緻に組み上げられていく流れの説明が圧巻です。学生時代に読んだ山田晶先生のアウグスティヌスの「告白」が頻繁に引用されているのも嬉しいです。2023/11/02
ひめぴょん
5
世界史で登場した人物でいろいろな愛(友愛、愛徳、自己愛、隣人愛、神の愛など)に関する西洋の古代と中世を中心とした愛の思想史。、耳なじみはありますが、内容を知らないことを改めて実感し ました。西洋の考え方の基盤をこういう書物で知っておくと、西洋の人たちと接するときにスムーズだと思いました。はじめに:単に知識が増えるだけで終わってしまうのではなく、ふだん私達が感じていることや考えていることを問い直し、少し違った角度から物事を見ることができるような新たな視点の発見や機会に。人間は誰もが不完全で弱い存在。だからこ2022/12/31
はるたろうQQ
2
あっさり読めるが極めて難しい書物。キリスト教の基本を「愛」から説明するものだが、アウグスティヌス、トマス・アクィナスの言葉を通じて、また彼らが強い影響を受けたプラトンやアリストテレスにまで遡って明らかにしていく。古典を読むことによって、現在の分断化され、悲惨で不安に満ちた世界の中で難しくなった、自己を愛することや隣人を愛することをもう一度考え直そうとする。そして世界は善に満ちていることが繰り返し強調される。その根本には、神が弱く儚く不完全な人間の存在を肯定し受け入れていること(神の愛)があるからだという。2025/01/26
フクロウ
2
人間がこうして生きていることの無根拠性、根源的偶有性を説明する逆転のロジックとしての神と神の愛が、トマス・アクィナスの愛の理論ということなのだろう。神の愛の措定により脱中心化が図られ、自分と他者を対等に見始め、また自身の敵も本当は善をなしうるのだが何か悪しきものに阻害されているだけにすぎないとみうるようになる。ギリシャ哲学とキリスト教理の融合はつい最近、坂口ふみ『「個」の誕生』でも見たし、passioの2つの意味は、スピノザ(国分功一郎)の言うコナトゥスと善=組み合わせの話を彷彿とさせられた。2023/05/13