内容説明
難解をもって知られる仏教書『正法眼蔵』。日本における曹洞宗の開祖・道元の主著であり、坐禅修行のマニュアルとされることも多いが、実は「哲学書」として読むときにその真価を発揮する。道元は、釈迦の教えをどのように理解し、どのように後世に伝えていこうとしたのか―。悟りとは?世界の成り立ちとは?時間とは?そのユニークな考察をわかりやすく解説する一冊。
目次
はじめに 智慧を言語化した哲学書
第1章 「身心脱落」とは何か?
第2章 迷いと悟りは一つである
第3章 全宇宙が仏性である
第4章 すべての行為が修行である
ブックス特別章 道元の「哲学」とは何か
著者等紹介
ひろさちや[ヒロサチヤ]
1936年大阪生まれ。仏教思想家。本名、増原良彦。東京大学文学部印度哲学科卒業。同大学院博士課程修了。気象大学校教授を経て、現在、仏教を中心とした宗教問題の啓蒙家として、多くの人々の支持を得る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
94
曹洞宗の僧侶の方が書いた本を読む機会が多く、宗祖道元の「正法眼蔵」を絶賛しているのを良く目にしていたが、確かにかなりしっくりくる考え方。ひろさちや先生の解説がとても分かりやすいからかもしれない。「無理に悟ろうとしない」と言うことがやはり肝心なのだ。生きている事そのものが修行であり、いつか悟りの方からやってくる、それを待てば良い。過去に悩み未来を恐れる事もない、現在しか存在しない、だから現在を生きろと言うのも納得出来てしまう。自力と他力の違いを「蜘蛛の糸」に例えての説明もとても分かりやすく、良書であった。2020/05/16
esop
58
不立文字・以心伝心── がよく知られていますが、まさに文字(言葉)を立てずに、心から心へと真理を伝えていくのが禅/涅槃とは煩悩を克服すること/いはゆる有時は、時すでにこれ有なり、有はみな時なり/ことごとく全ての存在が「いま現在」なのです/少欲──物足りないものを、物足りないままにしておくこと、知足──与えられたものを、全部が全部自分のものとしないで、一部を他人のために回すこと/修智慧──智慧を修得すること、不戯論──物事を複雑にせず、あるがまま、単純そのままに受け取ること/分別智で考えるな2024/09/08
樋口佳之
38
タイトルがすべて。立て続けに二冊の禅関連本読んで、禅のイメージ全く変わりました。「かーっ」2023/04/18
SOHSA
38
《kindle》道元の思想をとても短く解りやすく解説している。道元の主著である正法眼蔵のエッセンスを初学者でも理解できるようにとの心配りには敬意を表したい。著者が本書で主張する正法眼蔵を哲学書として読むことで理解が容易になるとの言説は、ある意味、目から鱗ではあったが、とは言え、哲学書としての視点で読んでもやはり正法眼蔵は難しい。すとんと腑に落ちない道元の主張もいまだに多々ある。やはり軽々容易ではない。2021/08/21
GELC
21
角砂糖や蜘蛛の糸等の例えが秀逸で、難しい本を分かりやすく読ませていただいた。ちょうど、エチカに取り組んだ直後だったので、汎神論と、道元の悉有仏性の解釈が驚くほど一致しているように思えて興味深い。物それ自体は善にも悪にもなり得る、本当の姿は仏しか分からない、我々はあらゆる自我を捨て、眼の前に有るあるがままの世界を見ようとすることが必要。煎餅の話で、自分が本来一つのものを分けて考えていることに気付かされて、ハッとさせられた。ひろさちや先生の他の解説書も興味が出てきた。2023/09/03