内容説明
山の神、里の神、家の神をはじめ、天狗、山男、山女、河童、幽霊などの話が百十九話収められた『遠野物語』。牧歌的な昔話としてイメージされる一方、そこには、現実世界を生きる人間たちの「負の遺産」ともいうべき姿が活写されていた。自然について、神様について、人間の生死について、かつての日本人は何を感じて生きてきたのか―。古層の記憶をたどりながら、私たち現代人の未来について考える。
目次
はじめに 古くて新しい物語の世界へ
第1章 民話の里・遠野
第2章 神とつながる者たち
第3章 生と死 魂の行方
第4章 自然との共生
ブックス特別章 世界の中の『遠野物語』
著者等紹介
石井正己[イシイマサミ]
1958年東京都生まれ。東京学芸大学教育学部卒業、同大学院修士課程修了。同大学講師、助教授を経て現職。専門は日本文学、口承文芸学。一橋大学大学院連携教授、柳田國男・松岡家記念館顧問を兼務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
60
物語の成り立ちから本編の解釈、普遍性の考察、文壇への影響、海外での認知事情など物語への興味をもう一段掘り下げる話ばかりで面白く読めた。柳田国男と語り主の佐々木喜善の人物像が浮かんできたのも良かった。佐々木は若い世代で祖父母の語りを現代人に近い感覚で受け止めていたようだ。物語の刊行は一世紀ほど前。近代化は地方にも及び習俗文化が薄れる中、二人の出会いでかつての日本人の独特な感性、生と死・嘘か真の境界の受容性が鮮烈に残されたのが感慨深い。そして物語を読むことで著者の言う無意識の記憶に触れるという言葉に合点した。2026/01/27
ころこ
41
メディア論として読めないか考えました。テレビをみるように、野良仕事で退屈な日々を紛らわす噺は、メディアの向こう側の世界をつくることで、実際の生活世界よりもイメージの世界を広く豊かにします。芸能人のように河童をみて、社会面の記事をみるように神隠しの噂をする。テクノロジーに頼らない『遠野物語』の時代にこそ、時間と空間を断片化して再構成する人間の想像力が顕在化すると考えると、我々は何時の時代でどうなっても、今見えているものの向こう側を欲望する存在だということを再認識します。小説もまた、そういう読みが成立します。2019/08/10
東谷くまみ
34
鯨庭さんの「遠野物語」の1章ごとに挟まれる石井先生の解説がピリリと効いていたのでこちらも。遠野物語を紐解いていくと昔の人々が何を思い、悩み、どのように生きてきたのかが見えてくる。貧しさ故に手にかけざるをえなかった子供への深い心残りや悲しみ、あの世できっと幸せに暮らしてほしいと願う親の気持ちを昇華させたものが「河童」の話なんだろう。物語の核には人の痛みがある。生と死、自然と人、高齢者と若年者、障がい者と健常者…なんでも「わけて」考えるようになったけど、昔の日本人の持つ「曖昧さ」は優しさに繋がる気がする。2024/12/08
こぽぞう☆
19
「遠野物語」こういった本は、読みたいなとなんとなく思っていても、本屋で平積みにされているわけでも、図書館で目立つ場所に置いてあるわけでもなくて、意外と手に取る機会がない。100分で読めるという抄本で読めたのは良かった。次はできれば現代語訳ではない(この本にも文語で引いてあるけど)「遠野物語」を読んでみたい。江戸時代という個人が旅することもままならない時代と、急速に進んだ近代化の明治、その狭間でしか記録できなかった物語。2016/06/14
てん06
17
遠野物語をいくつかの角度から読み解き、解説している。作品の成り立ちや位置づけ、採集された物語を「神とつながるものたち」「生と死 魂の行方」「自然との共生」といった角度から解説されている。現代と違い、死が身近に、日常にあったことや、自然をリスペクトし共生していたからこその物語の数々。そこには子殺しや親殺し、親棄てといった負の遺産もある。科学が進歩して何もかも合理的になることが果たして全面的に良いことなのか、考えさせられる。続編である「遠野物語拾遺」も読んでみたい。2023/08/15
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