内容説明
二人の少年ジョバンニとカムパネルラの、美しい天上の旅と永遠の別離。『銀河鉄道の夜』は、未完の作品ながら、色褪せることなく読み継がれている。孤絶や悲しみを常に抱えつつ、宮沢賢治は故郷・花巻の地から小さな物語を生み出し続けた。遺されたその結晶は、独自の自然へのまなざしと、短くはりつめたその生涯に燃え続けた意志とを、今も静かに映し出す。「悲しみを、いかにして乗り越えるか」。とこしえに輝く一条の光が、私たちを新たな夢想へといざなう。
目次
はじめに 世界に生きるすべての人へ
第1章 賢治の伝言
第2章 悲しみから希望へ
第3章 みんなつながっている
第4章 ほんとうの幸い
対談 ほんとうの幸福は探し歩くなかにある(ロジャー・パルバース;鎌田東二)
著者等紹介
パルバース,ロジャー[パルバース,ロジャー][Pulvers,Roger]
1944年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。オーストラリア国籍。作家、劇作家、演出家。カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)を卒業後、ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得。ワルシャワ、パリに留学ののち、67年に初来日。芝居の演出活動、小説や映画脚本の執筆など各方面で活躍し、映画『戦場のメリークリスマス』の助監督としても知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tenori
25
このシリーズはタイトル通り「100分de名著」をざっくり解説するものなので、ディープな追及までは期待していないのですが、それなりの解釈や背景が詰め込まれているので次のステップへの足掛かりとして好感の持てる内容です。日本人でさえ難解と感じる宮沢賢治の世界観をアメリカ生まれ、オーストラリア国籍の著者が解説している点が面白いと感じます。宮沢賢治の紡ぐ言葉や、込められた思いは文化や風習の違いを越える、何か普遍的なものがあるのでしょう。これを読んでから「銀河鉄道の夜」を読めば解釈の幅が拡がるかもしれません。2020/09/13
❁Lei❁
24
『銀河鉄道の夜』を中心に、他の作品の解説も交えつつ賢治の思想を探究する一冊。賢治は文学者以外にも、宗教者や自然科学者など多彩な面を持ち、それらの要素が合わさって作品を形作っていることを再認識できました。また多くの作品で求められる「ほんとうの幸い」とは一体どんなことで、賢治は私たちにどのようなメッセージを残したのかという謎への答えも提示され、とても参考になりました。勧善懲悪ではない点に、賢治のやさしさが表れていると感じました。2022/04/12
あきあかね
21
「どうすれば人間は、一度しかない人生に意味をもたせることができるのか」「人が他人と協調して生きていくには何が必要か」「自然と共存していくためには我々は何をなすべきか」 宮沢賢治の作品が時代を超えて、国を超えて今も読み継がれるのは、童話という形を借りてこうした人間にとって普遍的なテーマを描いているからだろう。 本書は、『銀河鉄道の夜』の作品に焦点を当てながら、賢治作品に通底するテーマを掘り下げていく。 賢治の最愛の妹トシの死を受けて書かれた作品としては『永訣の朝』などの詩が有名だが、『銀河鉄道の夜』も⇒2022/04/25
Kei.ma
14
この本は、宮沢賢治さんの表題の作品と、彼の持つ精神世界を紹介しています。明治三陸地震津波の年に生まれ、昭和三陸地震津波の年に没した宮沢賢治さん。その間の37年間に培われたのは、他の人のことを自分のこととして考える気持ちと、実践こそ、といった信念のようです。銀河鉄道の路線図が挟まっていました。始発駅から、物語を思い浮かべながら指で辿っていくと、石炭袋が見えてきます。私には、それが青い生を吸い込むブラックホールのように見え、何故か優しいカムパネルラを思い出してしんみりしてしまいました。2019/02/03
pocco@灯れ松明の火
9
ウンウン、理解は深まったつもりです。2016/10/21