内容説明
製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。打ち勝つべき現実とは、いったい何か。巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。
著者等紹介
伊坂幸太郎[イサカコウタロウ]
1971年生まれ、千葉県出身。東北大学法学部卒。2000年、『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。04年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。08年には『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞、14年、『マリアビートル』で大学読書人大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
1095
伊坂 幸太郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者ならではのシニカルな企業小説でした。著者の楽天愛が、この小説を書かせていました。著者の小説に坂口安吾の『不連続殺人事件』が登場するとは思いませんでした。イスタンブールからの初レビューでした✈️つづく(^_−)−☆2019/08/15
鉄之助
958
マシュマロに画鋲”混入”とのクレームに対応する、お菓子メーカーの宣伝マンが主人公。「会見べからず集」(ですが、だけど、遺憾に思う、前向き、善処する……など禁句)をつくるが、担当部長が会見場に持ってくるのを、何と忘れてしまう。出だしから一気に心をつかまれた。2019年7月の発刊だが、記者会見での炎上や、感染症・パンデミックなど、まるで現在を予言しているような内容だ。本文の間に挟み込まれた川口澄子のコミックパート(吹き出しのない漫画、がまた良かった)も、違和感なくすんなりと面白かった。2024/09/19
ウッディ
857
会社の広報担当の岸は、クレームがきっかけで都議の池野内と知り合い、ホテルの火事現場にいたことを言い当てられる。夢の中のRPG世界で猛獣を倒せば、現実世界で危機を脱する、不思議な経験を共有する岸と池野内とヒジリは、新型ウイルスの大流行という危機を乗り越えられたのか?伊坂さんらしい伏線の回収が気持ちよく、漫画が挿入されることで、夢の世界のイメージもつかみやすかったが、ウィルスへの対応が安直で、こんなに簡単にはいかないだろうと、今だからこそ思ってしまいました。不遇の係長の未来の姿にニヤリとしました。2020/02/20
bunmei
809
ハシビロコウを二度ほど見たことがありますが、殆ど動かず、大きな嘴と眼光鋭い目が特徴の大型の奇妙な鳥です。本作は、このハシビロコウが重要なキーとなり、伊坂さんらしい突拍子もない設定で、現実の世界と夢の世界が交錯するパラドックスの世界観が広がる作品となっています。そして、要所に描かれているサイレント・漫画が、物語とリンクして、アクセントとなっています。会社員と議員とアイドルの3人が体験する夢と現実の世界。そこに新型ワクチンを巡る国家ぐるみの陰謀。夢の中で、彼らがその陰謀に立ち向かうファンタジー作品です。 2019/08/30
蒼
784
RPGのような物語で、一気にあっという間に読んでしまった。徹頭徹尾伊坂幸太郎さんの世界が広がっていて、読み手も一緒に戦っているような感覚で、結末まで一直線。相変わらず現代社会の事象を皮肉たっぷりに活写して、サラッとした物言いに騙されそうになりながら、いやそれって重大な事でしょうと次のページになってからまた前に戻るみたいな読書だった。利権や私欲、大手会社や政治家役人、みんなこんな事有りそうって思ってしまう不幸をも思う。それでも面白かった。伊坂幸太郎さんは、物凄い小説家だと改めて思う。2019/07/20