内容説明
学習障害の一つである難読症をもつ小学校6年生の斎賀結望は、両親を亡くし、親代わりである兄・昭彦と二人で暮らしている。ひらがなの文章さえすらすらとは読めないが、とある「道具」を手に入れ、文字と言葉を自分の力に変えていく。そしてある日、両親と縁のある場所をめざし、ユノは西へと旅に出る。
著者等紹介
中山智幸[ナカヤマトモユキ]
1975年鹿児島県生まれ。西南学院大学文学部卒。2005年、「さりぎわの歩き方」で第一〇一回文學界新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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☆よいこ
79
難読症?LD?自閉症?の小学6年の結望(ユノ)は25歳のカメラマンの兄と二人暮らし。両親は事故で亡くなるまでユノを愛し、特別支援教室を作るよう小学校に働きかけたり、ユノが一人でも外出できるように工夫を凝らしたりしていた。突然兄の恋人、真理子が同居することになりユノは驚く。多少強引な真理子はユノを連れて九州へ旅行に出る。向かう先は父の遺した写真の無線塔。ユノは電子書籍の読み上げ機能を使いスティーブン・キングの『IT』を読みながら旅を続けた▽ユノ母の気持ちも分かる。会田先生に最初腹を立てて読んだが同感もあり2024/06/17
ぶんこ
64
読み終わっても難読症を理解する事は出来ませんでした。周囲に理解されないのは辛いだろうな、しかも身内なら尚の事。 ユノのお兄さんも辛かったのでしょう。恋人真理子さんのような人で本当に良かった、最初はそれが判らず、無神経な人だなと思っていました。 私も会田先生のような杓子定規なところが有ると気付かされもしました。 理解しようと頑張らずに、ユノの個性として受け入れるだけでよかったのでしょう。 途中に挟まれている文章の語り手の名前が書かれてなくて混乱しました。 再読しないとこの本の良さは判らないかもしれません。2016/01/18
はる
44
良かったです。難読症(ディスクレシア)の少年が成長する物語。ある日、家にやって来た彼の兄の恋人。彼女と共に、ある決意を持って旅に出ます。彼の視線で描かれる世界が切ない。周りに理解されず、自分自身何者なのか、何をするべきか分からずに悩みます。彼の家族の葛藤する姿、教師たちの無理解。何が正しいのか、いろいろと考えさせられました。少し読みにくいですがセンスのある文章。ラストも爽やかです。ただ、障害の性質からすると、この結末は少し疑問に感じてしまうのですが。2015/12/26
シャボン玉
32
「難読症」というものを理解していないし、理解していこうとしていない学校側の対応(°°;) 大人な語りは大きくなったユノとは思わなかった2016/11/07
さく
28
難読症の少年ユノの成長物語。ユノの母親、父親、兄・昭彦、昭彦の彼女・真理子、学校の先生。人によってユノの性質の捉え方は違う。ユノには何ができて、何ができないのか。頑張ればいつかできるのか、本当にできないのか。昭彦や真理子がユノに何をしてあげられるだろう、と考え悩んでる内容が本当によく伝わってくる。高い無線塔を登った先でユノがあるものを「見つけた」驚きに、一緒に胸が熱くなった。昭彦がユノの成長に涙するシーンも不意打ちだった。お兄ちゃん、不安も多かったけど、本当に頑張ってきたよね。2018/01/08