内容説明
精神科医マーロウが担当した患者ロバートは、著名な画家。ワシントンにあるナショナル・ギャラリーの絵画“レダと白鳥”に切りかかり、病院送りとなった。口もきかずに、謎の“黒い巻き毛の女”をひたすら描き続けるロバート。常人には想像もできない「描くこと」への執念、型破りな生きざま、少年のような無邪気さで人々を魅了する姿。彼が大切に隠し持つ古い手紙には、いったい何が隠されているのか。それを手にしたとき、過去と現在、若い恋と老年の恋が狂おしく交錯しはじめる―。
著者等紹介
コストヴァ,エリザベス[コストヴァ,エリザベス][Kostova,Elizabeth]
作家。イェール大学卒業。ミシガン大学にて創作学修士号取得。ホップウッド賞を受賞した前作『ヒストリアン』は全米ベストセラーとなり、44カ国語に訳され、世界で150万部発行された
高瀬素子[タカセモトコ]
翻訳家。1960年生まれ。東京大学文学部英文科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ガクガク
35
前作『ヒストリアン』が面白かったので、移動図書館で本書を見つけ迷わず借りる。〈黒い巻き毛の女〉を憑かれたように描き続ける天才画家は精神を病んで何も語ろうとしない。その担当医師となった主人公は、画家の別れた妻を訪ねて病の原因を探ろうとするが、やがて画家のもう一人の彼女と遭遇。画家が大事に持っている手紙と謎の巻き毛の女との関係は?そして間に挿まれる1870年代フランスを生きる女流画家と伯父とのもう一つの物語は? 時空を超えた二つの物語が下巻でどう展開するのか・・・印象派やモダンアートの画家達の登場も楽しめる。2014/03/08
星落秋風五丈原
13
美術館で絵を切り裂こうとした男ロバートは将来を嘱望された画家だった。そんな彼に同じく絵を描く医師マーロウが惹きつけられ、彼の内なる動機を探ろうとする。但し画家の内面吐露は行われず、あくまでもマーロウ、彼の妻ケイト、彼の恋人メアリーという第三者視点から画家がどのような人であるかが明らかに。そしてもう一つ、ある人の往復書簡が挿入され、途中から三人称の物語に。2014/05/05
akio
10
「ヒストリアン」のイメージが強かったので、謎だらけで掴み所のない展開に戸惑っています。けれど広がるのは黒い巻き髪の女性の作品群による優美ながら濃厚なイメージに、手紙から偲ばれる秘めた愛情が重なり、表紙にも使われているレダの絵にタイトルの白鳥泥棒がこれからどう絡んでくるのか、先が気になります。2015/02/03
わんこのしっぽ
10
美術館で絵を切り裂こうとした男。その男を担当した精神科医が、その絵の謎に迫ろうと、男の過去を辿っていく。絵画に纏わるミステリー色がもう少し色濃いのかと思ったけど。これはこれで。下巻へ。2013/02/16
aiko
4
精神を病んでいる画家の男が描く肖像画のモデルに嫉妬する妻と愛人。そんな馬鹿なと思うのに、なぜか、画家との関係を読んでいるこちらも勘ぐってしまう。作者の力量のなせる技かな?でも、登場人物の誰にも感情移入できず。2012/12/30