内容説明
「パパがどんなふうに死んだか知る必要があるんだ」「なぜ?」「そしたらどんな死に方をしたか発明しなくてもよくなるから」9.11の物語。世界的ベストセラー待望の邦訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
122
若さ漲り、仕掛けあふれる作品。吐き出さねばならないトラウマに意欲が重なる。ドイツ系とユダヤ系。連合国とドイツ。被害者であり、加害者。色んな相対性が溢れている。ロックフェラーセンターとワールドトレードセンター。第二次世界大戦と2001.9.11。気付かれない張り紙。一方向の想いの吐露が重なっていく時に希望がみえると思った。少年のかかえる後悔と辛さは、あの時、N.Y.が、アメリカが経験し、越えなければならなかったもの。しかし、それだけにしなかった作者の多角的視点。すごいね。2022/06/25
kana
101
私が2011年に出会った本の中で間違いなくNo.1の作品。大切な人を亡くした喪失感とそれでも愛さずにはいられない人々の熱い想い。最初の1ページから最後の1ページまでノンストップで心がふるえっぱなしでした。ビジュアルライティングという手法も素晴らしかったです。オスカーとオスカーを取り巻く人々、そして世界中のオスカーと同じ苦しみを抱える人々の未来の幸せを切に願います。。東日本大震災後の今だからこそ出会う意味も大きい一冊でした。2011/09/28
風眠
75
本自体が混乱しているのである。赤ペンで校正されたページ、徐々に文字が重なっていき終いには真っ黒になってしまうページ、数字の羅列のみのページ、一行だけのページ、メモと走り書きだけのページ、etc。その混乱っぷりはそのまま9.11で父親を亡くしたオスカーの混乱であろう。第二次大戦のドイツで空襲を受けた祖父母の往復書簡と、9.11後に父の遺品である鍵の鍵穴を探す少年の「ありえない」哀しみが徐々に交錯していくさまが痛い、ザクザクと痛い。とても読みづらくて難しい本であったが、最後まで読み通して本当によかった。2012/05/08
ひらちゃん
64
オスカーの語りは確かに「ライ麦畑でつかまえて」を思い出しますね。9.11テロとドレスデン空爆。大好きな父の死後、謎の鍵の秘密を探し回るオスカー。彼を見守る祖母もまた傷を負っていて…。新しい本のカタチなのでしょうか。オスカーの撮った写真、移民ゆえのたどたどしい手紙。1ページに一行の文字、どんどん小さく狭まって真っ黒になるページ。彼、彼女の心情が伝わる表現の自由さに圧倒されました。亡くなった者も辛かったでしょう。遺された者の悲しみは何処に向かえばいいのか正直わかりえません。2016/10/01
さゆ
59
映画には映画の、原作には原作のよさがあると思う。9.11も想像を越えた悲劇だったが、3.11も同じだ。ごくごくありきたりな、自覚はないかもしれないながらも幸せな毎日が、ある日突然、きわめて暴力的に奪われること。その悲劇は命を奪われる本人だけでなく、大切なかけがえのない人を奪われた人にも襲うんだ。あれが最後の「おやすみ」になるなんて思いもしなかったオスカーが、父の死の理由を探すその姿が痛々しい物語だった。2012/05/14
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