内容説明
著名なベストセラー作家でありながら、本当の姿を明かすことなく生きてきたヴァイダ。古書店を手伝いながら小さな伝記物を書いて静かに暮らしていたマーガレット。ふたりがひとつの作品に取りくんだとき、とてつもない「真実の物語」が産声をあげた。守りぬかれた秘密、禁じられた遊び、決して揃わないカード…そして、最後に謎を解く鍵を握る者はだれか。
著者等紹介
セッターフィールド,ダイアン[セッターフィールド,ダイアン][Setterfield,Diane]
英国ヨークシャーのハロゲート在住。19~20世紀のフランス文学の専門家で、とくにアンドレ・ジッドの研究者。イギリスとフランスの大学で教鞭をとったあと、個人でフランス語を教える。作家のジム・クレイスに才能を見いだされ、『13番目の物語』でデビューを果たす
鈴木彩織[スズキサオリ]
翻訳家。明治大学文学部英米文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
財布にジャック
56
読んだ後の充実感がとても心地よいです。謎が解きたい一心で下巻も凄い勢いで読んでしまったんですが、全ての謎を知った上で、時間をおいてゆったりと読んだらもっと良いのではと思わせるような物語でした。上巻の段階で、どんでん返しは絶対来るな~とは思っていたんですが、こういう形で来るとは予期出来ずに、素直にひっかかってしまいました。物語全体を包み込むような不思議な雰囲気も魅力的で、作中に本も沢山登場して本好きには堪らない作品です。2011/09/26
白のヒメ
48
軽快で読みやすい文章が、物語後半になって重く辛く変化していく。人間の愛憎というのは、こうも生々しくグロテスクなものなのか。薄暗い年月をたたえた屋敷の中で、死を目前にした人気作家の語る己の過去。その作家の真実と主人公の真実が重なり合った時、言葉を失うほどの衝撃に襲われる。まさしく13番目の不吉な物語。しかし、救いになるのはどんな人間にどんな秘密があろうとも、それは全て死後に明らかになるのだろうということ。呼吸を止めた作家の顔がほほ笑んでいたのは描写になくてもわかる。だからこそ人生は生き抜く価値があるのだ。2018/05/18
星落秋風五丈原
26
エンジェルフィールドというその名前とは裏腹に、屋敷では愛と憎しみ、嫉妬、執着、失恋、誕生と死など様々な事件が起こる。その中には、とても事実とは思えない物語もあれば、事実を覆い隠すために作られた物語もある。最初のうちは懐疑的な聞き手マーガレットの反発が描かれていたが、彼女のヴァイダに対する反感が揺らいでいくことで、事実(Fiction)/物語(Story)の区別が次第に曖昧になってゆく。重層的な物語から現れてくるのは、過酷な運命を一人で胸にしまいこみながら生きてきた一人の女性の強さ、優しさであった。 2014/10/13
わんこのしっぽ
20
いつしか、マーガレットと同じ目線で物語の謎を追っていました。終盤話が急展開して霧が晴れて視界が一気に開けたような感覚に。そして13番目の物語へと…。面白かった!満足して読了。2013/05/05
U
19
面白かった! マーガレットの気づくシーンに、こちらも視界を開かれる気分でした。ああ、そうか!と。翻訳からもうかがえるうつくしい文体。瞼に浮かび上がる情景に何から何まで惹きつけられる。木苺を盗む小汚いこどもの姿を想像すると一枚の哀しい絵のようです。それから、訪れてくれた彼女がひかりのなかに見える。穏やかな余韻と、たっぷりとふりかかる充足感を覚える読後でした。マーガレットはこれからミステリーも好きになるのかしら。2013/02/12