内容説明
トンボ、メダカ、ドジョウ、サクラソウ、アサザ、フジバカマなど、この数年、急速に姿を消しつつある、身近な生き物たちや草花。大量生産・大量消費・大量廃棄という、現代社会の危うさと空しさ。こうした生物多様性の急激な喪失は、生態系の健全さを失わせ、限界をわきまえない地球環境の過剰利用は、地球そのものを破壊する。非平衡、不安定、不確実という、生態学の提示する自然観は、生態系の複雑さと繊細さに、順応的に向き合うことを求める。霞ヶ浦の豊かな水辺の再生を試みる保全生態学の第一人者が、生態系を意識する社会の必要性とそのための方途を強く訴えかける、提言の書。
目次
序章 今なぜ、生態系か
第1章 「ヒトと生態系の関係史」から学ぶ
第2章 生態系観の変遷
第3章 進化する生態系
第4章 撹乱と再生の場としての生態系
第5章 健全な生態系とは
第6章 巨大ダムと生態系管理
第7章 生態系をどう復元するか
第8章 生態系を蘇らせる「協働」
終章 生態系が切りひらく未来
著者等紹介
鷲谷いづみ[ワシタニイズミ]
1950年、東京生まれ。東京大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了。理学博士。筑波大学をへて、現在、東京大学農学生命科学研究科教授。専門は植物生態学・保全生態学
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感想・レビュー
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Shoji
40
日本の自然は極めて豊かで多様な生物で満ち溢れている。それは、太古の昔から、自然の作用による撹乱(地震、台風、洪水、地滑り、雪崩など)は自然の力で回復し、さらに種の繁殖の契機にしてきたからだ。しかし、ヒトによる撹乱(森林の皆伐、大規模乱開発など)はその回復プロセスが自然に備わっておらず、再生不可能に近い。いかに生態系を蘇らせるか、いかに将来の世代に自然の豊潤さを伝えて行くことができるかを提起しています。2020/05/03
愛奈 穂佳(あいだ ほのか)
5
【心の琴線に触れた言葉】祖先を崇める文化はさまざまな民族に共通であるが、数世代後の子孫の幸せを願う文化は、それほど一般的ではないのかもしれない。しかし、今後の人類の存続は、祖先よりもむしろ子孫を慮る文化、すなわち持続可能性という倫理を支える文化を早急に築くことができるかにかかっているともいえる。2013/11/20
うえ
4
「日本列島は、モンスーン気候帯において島弧造山帯をなしているため、火山活動、地震、台風などを数多く経験してきている。しかも…水や土砂の動きが大きくきわめて活発な自然の撹乱にさらされる。したがって、植物相の中には、そのような撹乱に依存して世代交代をしたり、植物体が破壊されても残された部分から再生する能力をもった植物が少なくない…温度や水分などの条件にまぐまれているので、植物なおうせいな成長を期待できる」「くり返し再生するコナラやクヌギ…毎年、刈りとられても草原を維持するススキ、オギ、ヨシなどのイネ科植物」2017/07/28
家の中のぱっぽ
1
表題の通り、生態系を蘇らせるにはどのような方法が適切かを保全生態学の知見や海外の事例を通して解説してあります。生態系とは何か、生態系が衰退するとどのようなことになるのか、また保全するにはどのようにすれば良いのかといった保全生態学の最も根底にあたる部分も解説しています。本としてはかなり古くなっていますが、入門書としても勉強になります。2021/11/10
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