出版社内容情報
『菊と刀』の母胎となった戦時中の知られざるレポート。「責務体系」と「自己鍛練」などで日本人の行動を捉え、天皇の処遇問題で戦後の米国政策に大きな影響を与えた、問題の書。日本人の心臓部に肉薄する。
内容説明
『菊と刀』の知られざる原型。ベネディクトは日本人の「ころころ変わる行動」の背後に潜む倫理基準を明らかにし、敗戦後の日本人を侮辱するな、と米政府に忠告した。
目次
1 日本人は宿命論者なのか?
2 日本人の責務体系
3 日本人の自己鍛練
4 「誠実」
5 危うい綱渡り
覚書より―天皇はいかに処遇されるべきか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
10
『菊と刀』で日本人の倫理体系をプロファイルし欧米のそれと比較した著者は、菊の優美さの奥に偽装された自由意志を、刀の残酷さの奥に自己責任の倫理を見た。その未刊行資料を邦訳した本書では、著者が日本人の倫理を責務体系として捉え、天皇中心の「義務」の縦軸と親族中心の「義理」の横軸の中に戦前日本人の行動パターンを見出したことがわかる。興味深いのは、戦時は天皇制が義務の中心だが江戸期は将軍中心で可動性があり、現行は戦後も天皇制を維持する統治を勧めている点と、アジア各地にこの責務体系に似たものの存在を指摘した点である。2024/03/22
センケイ (線形)
2
始めはメタで皮肉な興味で手に取ったのだけど、それを恥じるほどいい話。この人なくして戦後日本の復興は無かったのじゃないだろうか。異民族やマイノリティといった「周辺」を、皆に受け入れさせる熱意、そして対象を客観的に紹介しつつその感情を考慮した妥協点を示す手法は、どちらもすぐにでも見習いたい。また、人類学や、さらには小説・民話・劇など創作物の研究を大いに実用化した例には心くすぐられる。苦境から栄転して才能を発揮するさまや、厳密さからは反れるものの政治学・詩学の造詣をも活かす立体的な働き方には、勇気をももらった。2017/01/31
えるも
0
日本文化について客観的に解説されている。「義理」や日本人の感覚についての英語の解釈、欧米の価値観との対比は一読に値するかと。2013/10/09
Jiemon
0
前半は全て「菊と刀」に記載さている内容であり同書を読んでしるのであば改めて読む価値なし。 後半はベネディクトの解説。解説3では、C.ダグラス.ラミスの「菊と刀」の解釈につき記載。一人のすぐれた詩人によって書かれた「政治文学」であり、日本人ですらそが母国について書かれたものと騙された程だと書かれている。「菊と刀」につき異論、反論があるのは承知しているが、60年を経て、尚、日本人に読み続けらている事に対しては素直に凄いと思える。2013/01/04
とも
0
睡眠に貪欲な日本人。2009/09/06