内容説明
自由と平等をうたう国家に溢れていた人種差別と不平等―大きな夢と力強い言葉、そして非暴力の闘いが人々の心を揺さぶり、変革の嵐を巻き起こした激動の一時代。
目次
第１章 青春の日々―南部と北部
第２章 非暴力の苦闘
第３章 抵抗する深南部
第４章 「私には夢がある」
第５章 “長い暑い夏”のなかで
第６章 反戦、そして暗殺
第７章 キング牧師の遺産
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よむよし
99
15日はキング牧師の日(米国祝日)。ガンジーが「私の非暴力の最も純粋なメッセージを世界に伝えるのは黒人かもしれない」と語って20年後キング師が登場する。その歩みは公民権法成立以降のほうが苦渋に満ちている。白人だけでなく黒人からも不満が噴出する。ケネディ暗殺の悲報を聞いた時に「これは私にもまた起こるかも知れないことだ」とコレッタ夫人に呟く。だが闘争は続きスラム街等に赴き人種差別と表裏にある貧困と格闘する。そこで絶望的貧困の背後に国家的暴力「戦争」を見いだす。激しい批判を受けるなかベトナム戦争反対を宣言する。2024/01/13
まーくん
96
1994年刊のやや古い本。著者猿谷要先生はアメリカの歴史や社会、文化などを幅広く研究、特に黒人解放史に詳しい。キング牧師の有名な「私には夢がある」演説から30年後の時点で黒人の’50,’60年代の人種差別撤廃運動をキング牧師の活動を中心に振り返る。深南部の白人保守層の反発は凄まじく、警官からの暴力やKKK団などによるリンチで多くの犠牲者が出ている。世界をリードする民主国家でこのような事態が許されていたとは信じられない。思えば自分が中高生の頃の話ですが、ニュースで知るアメリカは荒れていた。⇒2024/01/22
conegi
9
ブックオフで見かけて、なんとなく購入。キング牧師の生誕から殺害と、その後の影響まで。著者はリアルタイムで触れ合った世代で、文面からは当時の空気感が伝わってくる。今でも差別が根絶されたとは言い難いが、当時の時代からは随分と進んだ。しかし、これだけの代償がどうしても必要だったのだろうかと思ってしまう。今のアメリカの感覚は良くはわからないが、「Dream」が本当の形で実現できますように。2024/02/04
Mentyu
3
キング牧師の生い立ちからその死後までを時代の情勢や雰囲気などの背景も含めて分かりやすく描き出している。実際に公民権運動の盛んな当時のアメリカを経験した著者ならではの考察や経験談もあり読み物としてもおもしろい。2013/10/25
の
3
非暴力・非服従を活動の基本として公民権運動を行なったキング牧師を、運動の舞台となった50～60年代のアメリカ社会と繋げて紐解く。反共の嵐に象徴されるように、運動の時代は画一性を主義とする保守主義の時代であった。そのアメリカの画一性から逸脱していた黒人大衆は、アメリカ社会に反抗する活動（女性解放運動・ベトナム反戦運動等）の気風もあって、戦後の合衆国社会の新たな統合のかたちを模索することができた。物語調で読み易かったです。素晴らしい学者である著者が亡くなったことに御冥福を。2011/02/02
