内容説明
ひとりの孤高の農学者が、古くからその有用性が評価されてきたアワ・ヒエ・キビなど雑穀栽培の起源地と、その祖先種を探し求めて、長年ユーラシア大陸各地を経巡り、そして遂に植物学・遺伝学的分析を通して、その原産地と伝播経路を突き止めた。本書は、積年の調査成果から遙かなる中央アジアに発し、世界じゅうに、更には日本へも通じてゆく複雑な雑穀の道の原像を、壮大な仮説と共に提示する。
目次
序 人間にとって栽培植物とは何か
1 穀類と雑穀と文明と
2 雑穀の世界を旅して(日本と東アジアの雑穀地帯;農耕揺籃の地、東南アジア;インド亜大陸への雑穀採集行;ユーラシア西南部とヨーロッパへの旅;アフリカ・サバンナ帯にて)
3 雑穀の道(ミレット・ロード)を求めて(ユーラシア大陸産の雑穀類の起源と伝播;インドは雑穀の一大センター;アフリカ大陸産の雑穀と文化交流;新大陸の穀類について;雑穀のきた道)
4 モチ性雑穀の民族植物誌(イネ科穀類のウルチ・モチ性と伝統文化;モチ性品種はどこに分布するか;モチ性穀類の分布とその民族植物学的意義)
終わりに雑穀の旅をふり返って
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takao
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ふむ2023/02/11
MIRACLE
0
雑穀について、世界各地の栽培状況、起源と伝播、モチ性の地理的分布を紹介した本。雑穀(millet)とは、種子が小粒のイネ科の穀物の総称だ(日本のアワ、キビ、ヒエなど)。ところが、日本の雑穀についても、歴史時代の記録にも雑穀の栽培を示すデータは、わずかだ(29頁)。そのため、過去の実態について、把握することは、きわめて困難な状況だという(同)。そのため、雑穀の研究は、その基盤そのものが脆弱である(つまり、将来性を欠いている)。個人的には、古代中国文明と雑穀との関わりについて、もっと知りたかった。2014/08/10
だしまき
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雑穀の知識がほとんどない自分にとって、この本はすごく専門的なもので難しく感じることが多々あった。ただ、雑穀の価値の高さというものはよくわかったと思う。今の日本は白米の文化が根付き、雑穀が姿を消しつつある。そんな現状の中だからこそ、救荒作物や遺伝的多様性の保全として利用価値の高い雑穀の存在にもう一度目を向け、その価値を見直し保全していかなければならないと感じた。2014/05/26