内容説明
廃仏毀釈の嵐のなか、奈良の寺々は荒れすさんでいた。日本の仏教史、文化史に偉容を誇る法隆寺もけっして例外ではなかった。そのなかで、寺の復興に全力を傾けた寺内外の人びとがあった。―荒廃、仏教美術の再発見、学問寺への道、再建論争、敗戦、金堂炎上、昭和大修理―維新から現在までの曲折の多い古刹の歴史を、克明に誌された「法隆寺日記」のなかにたどる。
目次
1章 昭和の大法要
2章 廃仏毀釈の嵐の中から
3章 再興にむかって(法隆寺会設立へむけて;岡倉天心氏の発案;聖徳太子奉賛会ついに設立;佐伯定胤師の情熱と法隆学問寺;大西良慶師と法隆寺)
4章 法隆寺に魅せられた人びと(フェノロサとビゲロー;平子鐸嶺氏と鉄斎氏の絵;子規氏と会津八一氏;ラングドーン・ウォーナー)
5章 昭和大修理はじまる
6章 大戦前後の法隆寺
7章 金堂炎上
8章 信仰と秘法の間で
9章 昭和の資財帳づくりへ
終章 寺の生活から(わが師佐伯良謙管主のこと)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
56
永井紗耶子さんの『秘仏の扉』を読みながら。著者は昭和61年当時の法隆寺執事長。明治の廃仏毀釈の嵐から大修理完成法要が行われた出版当時までの寺の軌跡を「内側」から描く。前半が明治大正の歴史で、明治期の記事の大半は『秘仏の扉』でも主役の一人だった千早定朝の詳細な日記からの取材なのでとても興味深い。維新後の奈良の寺院の困窮・真言宗への組替の葛藤・学問寺としての再起の決意・宝物の皇室献納の決断・下賜金の使途目録等が読み取れる。秘仏を開扉した形跡はあるが非常に事務的な記述なのがむしろ葛藤の大きさを感じさせる。良書2025/03/02
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