出版社内容情報
EBPM(客観的な証拠を重視する政策立案)に対する関心が国内外で高まっている.経済学者と現役の政策立案者が,EBPMに求められる取り組みを6つの政策分野において論じる.現状を踏まえた,EBPMに関する議論を活性化するための材料を提供する.
目次
総説 EBPMを政策形成の現場で役立たせるために
第1章 教育政策におけるEBPM―データベースの構築によるエビデンスの蓄積と活用
第2章 労働政策におけるEBPM―労働政策決定の正統性との関連から
第3章 医療・介護政策におけるEBPM―医療費適正化政策の施策効果を検証する
第4章 交通・社会資本政策におけるEBPM―費用便益分析の一層の活用を
第5章 課税政策におけるEBPM―労働所得税とマイクロシミュレーションの活用を中心に
第6章 電力政策におけるEBPM―供給安定性に焦点をあてて
終章 政策立案の力を研鑽できる場の構築を目指して
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
35
EBPMとはエビデンスに基づく政策立案のことで、日本でも2018年度から導入されたようだ。もっともらしく見えても何の根拠もない言説に基づいて政策立案するよりは数段良くなったが、効果を発揮するまでには前途多難といえる。先頃出された経済産業省のエネルギー基本計画にしても脱炭素ありきでつくられているため、2030年度は現在よりもエネルギーの需給が減少するというとんでもない計画となっている。身近なところでもレジ袋有料化による環境への影響すら発表できない現状ではEBPMなど絵に描いた餅にしかならないと思う。2021/08/13
koji
20
EBPMとは、エビデンスを重視する政策形成を言います。新型コロナウイルス対応を巡り、近年になく政策への関心が高まっていますが、表面的な議論ばかりと感じてました。本書の価値は、統計データという客観的証拠に基づく政策立案が日本でも進展していること(2016年~)が知れたことです。本書は6つの分野における経済学者の問題提起と立案者たる官僚のコメントを中心に構成されます。正直私には難解でしたが、政策現場では政治・マスコミのムードに流されることなく、真摯にプロセスを追い結果を追求している姿勢が分かり収穫の一冊でした2020/06/26
tacacuro
4
(総説と終章のみ了)エビデンスを重視する政策形成。これは当然のことだが、現実には事前にエビデンスを十分にかき集める暇もなく政策決定を迫られることが多いし、エビデンスの蓄積も足りない。当面は、すでに実行した政策について、次のエビデンスに耐えるような評価を積み上げていくしかない。例えば、9月以降の飲食店の時短営業がコロナの感染拡大防止にどれだけ寄与したか。JR東日本は終電時間を早めるという。1社にとっての最善手?がデフレスパイラルの引き金にならないだろうか。そのエビデンスを示せないか。2020/09/03
八百蔵
2
なかなか難しい。政策の起点は世の中の変化だが、その分野の統計を始めとするデータがない場合や逆に手持ちのデータでは変化が明らかな場合も相当あるだろう。また、政策は利害調整であるものがとても多く、一つの絶対的真理はない。例えば査定官庁と要求官庁の利害は異なる。別の方向性を示す証拠と証拠のぶつかり合いになるだろう。治療という目標に向かっては殆どの参加者が同方向になる医療との大きな差だと思う。2020/03/27