出版社内容情報
東京を中心とする国家統治の空間秩序はいかにして完成したのか.本書は,山県有朋など統治を担うエリートの活動の場――私邸,別荘,庁舎――の変容を辿り,1930年代に統治の政策形成・決定が現在のように都心部で完結するようになる過程を描き出す.膨大な資料を駆使した「空間と政治」研究の最先端.
内容説明
東京という新たな統治の中心が創成されていく中で、統治エリートらが実際に活動した空間に着目。近代におけるその全体像と変容を壮大に描く。
目次
序章 政治と空間
第1章 国家統治の中心の確立―皇城から宮城へ
第2章 邸宅と政治動態
第3章 統治エリートの邸宅利用―山県有朋を中心に
第4章 別荘地
第5章 政党とその空間
第6章 空間秩序の完成―大臣官邸を中心に
終章 政治=空間と公私の政治
著者等紹介
佐藤信[サトウシン]
1988年奈良県に生まれる。2011年東京大学法学部卒業。2015年東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程中途退学、東京大学先端科学技術研究センター助教。現在、東京都立大学法学部准教授、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
4
この本はかなり独特な近代日本政治史です。「政治の中心は、別荘私邸→庁舎→官邸と移動し、集積しつづけている」と。このように主張する地理学的政治学と要約できるでしょうか。 大磯や椿山荘を政治学的に扱うのも新鮮ですし、通例「官僚主導vs政治主導」というモデルで議論される昭和後期〜平成の政治状況を「庁舎から官邸への集約」という直線的歴史変動とみるのも挑戦的。官邸という政官一元体を志向する近年の保守トレンドを一種の産業集積として捉えたらどうなるのか、刺激的な仮説提起として受け止めました。2020/11/15
中将(予備役)
1
統治の中心となる「空間」に着目した日本近代政治史。独特の視点で興味深かった。自由民権運動から戦前二大政党に至るまでの政党の中心地(明治除き東京集中)は新鮮だったし、山縣侯の別荘で人を寄せたり寄せ付けなかったりの動きは面白かった。官舎官邸の分析は緻密で、震災後復旧が急がれなかったことから統治における私邸の重要度を推察していたのは納得させられたし、戦後の大磯や白金、平成の首相官邸整備を思い出すと、昭和の終わりまでこの傾向はあったのかもしれないと思う(今も首相官邸以外は無駄扱いされがちかも)。2022/12/01