出版社内容情報
現代中国において,紛争とその解決はどのようになっているのか.それは,理を説いて紛争を解決しようとする第三者(説理者)と,それに心から服する当事者(心服者)とによって演じられる劇ととらえられる.多くの事例を引きながら,「人民調解制度」の実態に迫る.
内容説明
本書は、中華人民共和国における紛争が調停的に解決されてきたありさまを描き、及び、なぜそのように解決されてきたのかを考察している。ただし、和を尊ぶ精神から中国人の訴訟嫌い、調停好きが導かれるという素直なすじにはなっていない。いかなる社会でも訴訟なしには済ますことはできないし、和を尊んでばかりもいられない。法を司る者と当事者となるべき者との双方の力量の不足、紛争形態自体、及び、紛争に関する認識の仕方の三者が調停的紛争解決を必要としてきたからであるというのが、本書の主張である。
目次
序(主題;関連研究史;本書の構成;資料及び用語)
第1章 紛争解決制度―歴史及び現行制度とそれらの説理・心服性(歴史;現行諸制度)
第2章 紛争解決制度の問題点―説理・心服を支える要因として(法院の力量;当事者の力量;立法の力量または立法過程の強度の政治過程性)
第3章 紛争形態―説理・心服を求める動態(婚姻・家庭・相続;土地・房屋;債務紛争)
第4章 紛争認識―紛争の激化と説理・心服による防止(毛沢東の「ふたつの矛盾」論;治安管理違反行為;「矛盾の転化」、「民間紛争の激化」)
結(総論;各章の整理;本書の中国法研究における位置付け;今後の課題)