出版社内容情報
商業の時代に「貴族の徳」の復権を試みた初期啓蒙の思想家たち.貴族的精神のなかに専制に対抗する自由の存立基盤をみたモンテスキューを軸に,転換期に新しい社会の在り方を問うた強力な思想家の営みを描く. 渋沢・クローデル賞受賞
内容説明
本書は、あえて教科書的な言葉を使うなら「貴族(主義)的リベラリズム」(lib´eralisme aristocratique)と呼ばれる一連の思潮の中に、モンテスキュー(1689―1755)を位置づけるという作業を通して、彼の「自由な国家」論の特質を探求することを主たる目的とする。
目次
序論 問題の所在
第1部 専制権力批判の諸相(政治の再モラル化―フェヌロン;「国民」意識の覚醒―ブーランヴィリエ;メリトクラシーによる新しい位階秩序―アベ・ド・サン=ピエール)
第2部 モンテスキューの「自由な国家」論(三つのデスポティズム批判;イングランドの国制;フランスの君主政;市民の自由)
結論 貴族的精神の所在―ヒエラルヒー秩序から個人主義秩序へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
check mate
3
貴族主義とリベラリズムとが交錯するモンテスキューの思想を、歴史的脈絡のもとに繙く。イタリア、イタリア!で本論を締め、ニーチェを結論に持ってくるあたりが格好良い。2021/01/30
ささらもさら
1
モンテスキュー「法の精神」など、政治・社会思想について論じた、非常に面白い一冊です。生存権や所有権を生の前提に掲げる、いわゆる自然権に関する思想史的な試行錯誤について、モンテスキューと「三権分立」について、商業主義と身分主義について、などなど魅力的な題材の数々が繊細な筆致で分かりやすく説明されています。社会学や政治学の知識がない自分でも楽しく読めたのは、自然権を始めとする物事の多くに同時代性があるからだと思います。昔の話ではなくアクチュアルな話として、興奮しながら読みました。良書です。2018/10/23
cochou
0
ローマ法学者木庭顕推薦。「近代社会に反するアナクロニズムとして退けられるか、好戦的な国家主義に吸収されるか、ニヒリズムの表現となるか、伝統社会において政治的価値の中核を占めていた高貴さは19世紀以降の政治理論において扱いづらいものとなる。「貴族の徳」が二つの顔を持つヤヌス的情念の光と影はそれほど簡単に分けられるものでなく、一定の具体的条件においてのみ調和的なあり方を呈することができるものであろう。モンテスキューが試みたその探索の手続きの際立った繊細さと緻密さは今日でも読者を魅了してやまない。」2019/02/17