出版社内容情報
近代日本政治史研究の基本文献として今なお高い評価を受けている名著を、待望の新装復刊。大正デモクラシー期の政党政治を描く。
日露戦争を通じ明治政界は桂園時代に入る.貴族院・軍部・官僚と政友会の妥協による政治的安定は,藩閥・元老体制に対する護憲運動の展開により崩壊する.流動化する内政は,激変する国際情勢に対峙を迫られる.【初版1967年】
【著者紹介】
升味準之輔:元東京都立大学名誉教授
内容説明
謀報と謀略の露満国境に情熱の浪漫国境が重なりはじめた。大正政変と大陸政策―流動化した内政と激変する国際情勢の連関をダイナミックに描く。
目次
第7章 大正政変(桂園時代;大正政変)
第8章 東洋経綸(大陸浪人;辛亥革命の周辺)
第9章 大戦期の内政と外交(元老と政党;中国とロシア)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バルジ
3
第3巻では桂園体制の崩壊と大正デモクラシー下の外交政策、大陸政策を論述する。本貫の最大の特徴は制度化された明治国家の中で活躍する場を失った元民権活動家など所謂「大陸浪人」が大陸で種々の策謀を巡らし、一転して日本国内へと逆流してくる姿を描いている点であろう。日本の大陸政策は混迷を極めたが、その構成人物たる森恪や北一輝などの人物連が各々日本の「再建」のため帰国し各々動き出す。彼らはやがて政党内閣時代において政党・在野から日本の対外政策のみならず日本政治自体を動かす主体となる。その萌芽は日本の大陸政策にあった。2022/11/14
てれまこし
1
日本は戦争に負ける前に既に外交戦に負けていた。アジア植民地の人々、特に中国人の心をつかむ外交戦においてである。理由の一つは、明治憲法の分権的な性格のせいで外交が一元化されておらず、外務省や参謀本部などがバラバラに動いていたからである。これに大陸浪人たちの策謀が交錯して混乱を極め、外からの不信を買わずにはいなかった。しかし、もう一つの理由は、タテマエの部分がおろそかになったのである。米国も同じく偽善の帝国であったのだが、日本は自らの大義を信じるあまり、偽善を善らしくみせるだけの努力を怠ってしまったのである。2018/04/23